飲食店の年末年始は営業すべき?休むか開けるかの判断
飲食店の年末年始の営業判断|開ける・休むを決める基準
【この記事のポイント】
年末年始は、開けるべき店と休むべき店がはっきり分かれます。判断の軸は3つ。人件費、需要、そしてスタッフの意思です。感覚でなく、この3つの数字と事情で決める。それが結論です。
「周りが開けているから」「去年開けたから」で続けると、忙しいのに利益が薄い年末年始になりがちです。逆に、立地と客層が合えば元日から行列ができる店もある。同じ「12月31日」でも、繁華街の居酒屋と住宅街の定食屋では最適解がまるで違います。
この記事では、開ける・休むを冷静に決めるための判断基準を、現場のケースと数字を交えて整理します。どちらが正解という話ではありません。正直なところ、休む勇気が利益を守ることもある。あなたの店にとっての答えを、自分で出せる状態を作ります。
今日のおさらい:要点3つ
- 判断軸は「人件費(割増を含む実際の原価)」「立地と客層の需要」「スタッフの働ける意思」の3点。感情でなく数字で並べる。
- 年末年始は人件費が割高になりやすい。売上が平常の1.2倍でも、コストが1.5倍なら開けるほど赤字になる。
- 全開・全休の二択ではない。短縮営業や元日のみ休みなど「部分営業」で、利益と休息を両立できる。
この記事の結論
一言で言うと、年末年始は「開けるか休むか」ではなく「どの日を、どの体制で開けるか」を設計する期間です。最も重要なのは、割増人件費を織り込んだうえで、その日一日が黒字か赤字かを日別に見積もること。数字が見えれば、無理も、取りこぼしも減ります。
「なんとなく去年通り」で決めていませんか
12月に入ると、誰にも聞けないまま予約表を眺めてしまう
12月半ば、予約表とにらめっこしながら、31日と1日の欄を何度も見返す。埋めるべきか、閉じるべきか。スタッフには「シフトどうします?」と急かされ、常連には「正月やってる?」と聞かれる。答えを出さないといけないのに、確たる根拠がない。
結局「まあ、去年も開けたし」で押し切る。多くの店が、この一番大事な判断を、去年のコピーで済ませてしまいます。去年が正解だったかどうかも、検証しないまま。
よくあるのが、「休むと常連が離れるのでは」という不安です。この不安自体は否定しません。実際に、正月に開けている安心感でファンになる客はいます。ただ、その不安だけで全日フル営業を選ぶと、疲弊したスタッフと薄い利益が残ることもある。不安を打ち消すために動くのか、数字で得だから動くのか。ここを分けて考える必要があります。
実体験:元日に開けて「忙しいのに儲からない」に気づいた居酒屋
郊外の住宅街で20席ほどの居酒屋を営む方の話です。「正月くらい開けていないと」と、例年どおり元日から通し営業をしていました。ところが売上を分解してみると、元日の売上は平常営業日の約7割。来店は夕方の数組に偏り、昼はほぼ客が来ない。
一方で人件費は、正月手当としてスタッフ時給に約25%上乗せしており、さらに人が集まらず時給を上げて確保していた。食材も年末仕入れで割高。計算すると、元日と2日は営業するほど赤字という結果でした。「開けている安心感」に、数万円を毎年払っていたわけです。
翌年、この店は元日・2日を休みにし、3日から短縮営業へ切り替えました。常連には12月のうちに「三が日はお休み、3日から通常営業」と丁寧に告知。離れた客はほとんどおらず、むしろスタッフが休めたことで、繁忙の12月を乗り切る体力が残った。「開けない判断も、経営だった」と振り返っていました。
「休んだら負け」という思い込みが判断を鈍らせる
ここで一度、立ち止まりたいのが「休む=機会損失」という発想です。休めば確かにその日の売上はゼロ。けれど、割増人件費・食材ロス・スタッフの疲労という見えにくいコストも同時にゼロになります。
大切なのは、休みを「損」ではなく「コスト削減と体力温存の投資」として見る視点。実は、無理に開けて年始に主力が体調を崩すほうが、1月全体の売上にとっては大きな痛手になることもあります。
開ける・休むを決める3つの判断軸
軸①:人件費は「割増込みの実コスト」で見る
まず外せないのが人件費です。年末年始は人手が集まりにくく、正月手当や割増時給で一人あたりの単価が上がります。加えて、労働基準法では法定休日に働かせた場合の割増(休日労働は35%以上)も関わってくる。平常より人件費率が1.3〜1.5倍になる店は珍しくありません。
ここで見るべきは「その日の想定売上 − 割増込みの人件費 − 食材原価」。この差がプラスの日は開ける候補、マイナスの日は休む候補。単純ですが、日別に出すと判断がぶれません。
総務省の家計調査を見ても、外食支出は12月に大きく伸び、1月上旬はいったん落ち着く傾向があります。つまり「年末は需要、年始は谷」が起きやすい。この山と谷を前提に、12月は攻め、三が日は絞るという設計が、多くの店で理にかなうわけです。
軸②:立地と客層で「年始の需要」はまるで違う
同じ飲食店でも、需要の出方は立地で分かれます。オフィス街の店は、企業が休みに入る年末年始はほぼ客が消える。逆に、初詣スポットや観光地の近く、駅前の繁華街、家族連れが集まる商業施設内なら、元日から強い需要がある。住宅街は「近所で開いている店が少ない」ため、開ければ一定の来店が読める一方、単価は上がりにくい。
自分の店がどのタイプかを、まず冷静に見極める。「飲食店だから正月は稼ぎ時」と一括りにするのが、一番危ない思い込みです。
現場の声:全休か短縮かで揺れたスタッフとの会話
実際にあったやり取りを紹介します。
店主「三が日、どうしようか。全部休むと売上が心配で」
社員「正直、元日は僕も実家に帰りたいです。でも2日、3日なら出られます」
店主「なるほど。じゃあ元日だけ休んで、2日から短縮で開けるのは?」
社員「それなら助かります。フルで三が日は、去年ちょっとしんどかったので」
店主「わかった。無理して全員で回して、1月に誰か倒れたら元も子もないもんな」
この会話のあと、店は「元日休み・2〜3日は昼のみ短縮」に落ち着きました。スタッフの意思を先に聞いたことで、シフトの穴もなく、当日の士気も高かった。ケースによりますが、営業判断はスタッフとの合意形成そのものでもあります。トップダウンで「開ける」と決めた店ほど、当日の欠勤やミスが増えがちです。
軸③:スタッフが「働ける意思」を持てるか
3つ目の軸が、意外と見落とされます。年末年始に働けるスタッフが物理的にいるか、そして納得して働けるか。学生アルバイトは帰省で抜け、社員も家族の予定がある。頭数だけ揃えても、士気が低ければ接客もオペレーションも崩れます。
手当を厚くする、代休を確保する、希望を早めに聞く。こうした配慮とセットでなければ、無理な営業はかえって離職の引き金になる。人手不足の時代、正月の一日のために通年の戦力を失うのは割に合いません。
よくある失敗と、後悔しないための判断基準
失敗①:全開か全休の二択で考える
最も多い失敗が、「全部開ける」か「全部休む」の両極でしか考えないことです。実際の選択肢はもっと細かい。元日だけ休む、三が日は昼のみ、夜のみ、席数を半分に絞る、予約限定にする。
比較した人が確認したことは、たいてい「日別・時間帯別に黒字か」です。31日の夜は稼ぎ時でも、元日の昼は赤字。ならその時間だけ閉める。この粒度で見ると、無理なく利益が残る営業日が浮かび上がります。
失敗②:告知が遅く、常連を取りこぼす
休むにしても開けるにしても、告知の遅さは損に直結します。年末年始の予定は、客も早めに決める。12月に入る前後には、店頭・SNS・LINE・グルメサイトで営業日程を明示したい。
特に「休む」場合こそ丁寧に。「三が日はお休み、○日から通常営業します。今年もありがとうございました」の一言があれば、離反はほぼ起きません。黙って閉めるのと、感謝を添えて知らせるのとでは、印象がまるで違います。
最終的に選ばれた判断基準は「日別の手残り」
最終的に選ばれた理由を店主たちに聞くと、多くが「開ける・休むを、その日一日の手残り額で決めたから納得できた」と答えます。周りがどうか、去年どうだったかではなく、今年の自店の数字。
目安はシンプルです。想定売上から割増人件費と原価を引いて、はっきりプラスなら開ける。トントンや赤字なら休むか短縮する。そこにスタッフの意思を重ねて微調整する。例外もありますが、この順で決めれば大きく外しません。
こういう店は、いま一度シミュレーションすべき
もし今、「なんとなく去年通り、三が日も通し営業」と決めているなら、一度だけ日別の試算をしてみてください。31日夜、元日昼、元日夜、2日、3日。それぞれの想定来店数と客単価を出し、割増人件費と食材原価を引く。赤字の枠が一つでも見つかれば、そこは休むか時間を絞る候補です。
売り込むつもりはありません。開けるのが正解の店も、休むのが正解の店も、どちらもあります。大事なのは、その判断を「感覚」から「数字とスタッフの合意」に変えること。それだけで、忙しいのに儲からない年末年始や、無理をして年始に体制が崩れる事態を避けられます。まずは電卓とシフト表を並べる。今日できる一歩です。
よくある質問
Q1. 年末年始は人件費がどのくらい上がりますか?
A1. 店により幅がありますが、正月手当や割増で人件費率が平常の1.3〜1.5倍になる例が多いです。法定休日労働は35%以上の割増が必要になるため、この上乗せを込みで試算してください。
Q2. 休むと常連が離れませんか?
A2. 事前に感謝と再開日を丁寧に告知すれば、離反はほぼ起きません。むしろ「無理せず休む店」として好感を持たれることもある。黙って閉めることだけは避けてください。
Q3. 開けるか休むか、一番シンプルな決め方は?
A3. その日の想定売上から、割増込みの人件費と食材原価を引くだけです。プラスなら開ける、マイナスなら休むか短縮。日別・時間帯別に出すと迷いません。
Q4. 全部休むのは経営として問題ありませんか?
A4. 問題ありません。オフィス街など需要が消える立地では、全休が最も合理的な場合もあります。休みで割増人件費とロスを抑え、スタッフの体力を1月に回すのは正当な戦略です。
Q5. 短縮営業とはどんなやり方ですか?
A5. 昼だけ・夜だけの営業、席数を絞る、予約限定にするなどです。赤字になりやすい時間帯を閉め、需要がある枠だけ開ける。全開と全休の中間として有効です。
Q6. スタッフの希望はいつ聞けばいいですか?
A6. 遅くとも11月中には希望を確認したいところです。帰省や家族の予定が固まる前に聞くと、シフトの穴を防げます。手当や代休の条件も同時に提示すると合意が得やすいです。
Q7. 営業日程はいつ告知すべきですか?
A7. 12月の初旬までには店頭・SNS・LINE・グルメサイトで明示するのが目安です。客は年末年始の予定を早めに決めるため、遅い告知は取りこぼしにつながります。
Q8. 周りの店が開けていると、休みづらいのですが?
A8. 判断は他店でなく自店の数字で行ってください。立地・客層・人件費が違えば最適解も違います。周りが開けていても、自店が赤字なら休むのが正しい経営判断です。
まとめ
飲食店の年末年始は、「開けるか休むか」の二択ではなく「どの日を、どの体制で開けるか」を設計する期間です。判断軸は、割増込みの人件費、立地と客層の需要、そしてスタッフの働ける意思。この3つを、感覚でなく数字と合意で並べれば、答えは自然と見えてきます。
開けるのが正解の店も、休むのが正解の店もあります。大切なのは、去年のコピーや周りの目でなく、今年の自店の数字で決めること。まずは日別・時間帯別に手残りを試算し、スタッフの希望を早めに聞く。そして営業日程を丁寧に告知する。忙しいのに儲からない年末年始を、納得できる年末年始に変える。その第一歩は、電卓とシフト表を並べる今日から始まります。
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