飲食店のテイクアウト強化とは?利益を確保する設計方法
売れているのに残らないを脱出する原価・容器代・手数料の設計術
【この記事のポイント】
テイクアウトは「店内と同じメニューを外に出す」のではなく、「テイクアウト専用メニューで利益率を管理する」発想が前提。
正直なところ、デリバリーやモール出店は手数料が重く、設計を間違えると”忙しいのに利益が残らない状態”になりやすい。
ケースによりますが、まずは「アイドルタイムをテイクアウト専用時間にする」「原価と容器代を足して35%以内に収める」といった”数字基準”から設計したほうが長続きします。
今日のおさらい:要点3つ
- テイクアウトは「売上が立つまでのハードルが低い」分、「利益が残りにくい構造」になりやすい
- メニューを絞るほど仕込みのロスが減り、1個あたりの粗利が明確に計算できるようになる
- 値上げは「リニューアル」として打ち出し、内容の充実とセットで伝えると納得されやすい
この記事の結論
一言で言うと、テイクアウトで利益を出すには「店内と同じやり方をやめて、専用メニューと専用オペレーションを設計すること」が必須です。
最も重要なのは、「原価率+容器代+手数料」で粗利がどれくらい残るのかを数字で決め、それを逆算してメニューと価格を組み立てることです。
失敗しないためには、「とりあえずUberを入れる」「とりあえず全部テイクアウトOKにする」といった、”なんとなくスタート”を避けることがポイントです。
テイクアウトが「売れているのに疲れるだけ」になってしまう理由
気づくとレジ横にテイクアウト容器の請求書が溜まる
悩みのフェーズから。
ランチが終わったあと、レジ横の引き出しを開けると、テイクアウト容器の請求書が数枚。 「今月も結構出てるな」と思いながら、なんとなくそのまま閉める。 夜の営業が終わって片付けが落ち着くと、ついついスマホで売上アプリを見て、「今日はテイクアウトがまあまあ出たな」と数字だけを眺めてしまう。 その一方で、銀行の残高はなぜか増えていない。そんな日々の繰り返し。
正直なところ、これ、現場ではかなり”あるある”です。 実は、テイクアウトは「売上が立つまでのハードル」が低い分、「利益が残りにくい構造」になりがちです。
- 原価率が店内と同じ
- 容器代が1個あたり30〜80円かかる
- デリバリープラットフォームの手数料が売上の30%前後
- 人件費はランチやディナーと同じラインで発生
ざっくりですが、1,000円のテイクアウトを売ったとき、 原価35%(350円)+容器代50円+手数料30%(300円)=700円が”コスト”。 ここに人件費と光熱費が乗ってくるので、「売れば売るほど忙しいのに、口座は増えない」という状態になりがちです。
実体験①「全部テイクアウトOK」で現場がパンクした店
以前、知り合いの居酒屋さんからテイクアウト設計の相談を受けたことがあります。 きっかけはコロナ禍での客数減少。「なんでもテイクアウトOKです」とSNSで告知したところ、ありがたいことに常連さん中心に注文が増えました。
でも、現場は地獄でした。
- 刺身盛り合わせもテイクアウト
- 揚げ物もテイクアウト
- 焼き物もテイクアウト
- 1件ごとに内容がバラバラ
- ピークタイムと注文時間が被る
ある日の夜、カウンター越しにオーナーがぼそっと言いました。
オーナー「売上は増えてるはずなんだけど、なんか疲れ方が違うんですよね。正直、テイクアウトが入るとホールも厨房もバタバタしすぎて…」
売上の数字だけ見ると、たしかに前年よりプラス。 ただ、終電ギリギリまで仕込みと片付けをする日が増え、スタッフは消耗。 なにより、「ここまでやって、この手取りか…」という感覚が辛そうでした。
そこで、テイクアウトのルールを大幅に絞りました。
- 「揚げ物盛り合わせ」と「焼き鳥盛り合わせ」「おつまみセット」の3種類だけ
- テイクアウトの受け取り時間は17:00〜19:00に限定
- 事前予約のみ(当日受付は17:00まで)
「また騙されるんじゃないかと思った」とオーナーは半信半疑でしたが、1ヶ月後に話を聞くと、 「メニューを絞ってから、むしろ売上はほとんど変わってないのに、現場の疲れ方が全然違う」とのこと。 1件あたりの単価も2,000〜3,000円とまとまりがよく、粗利率も事前に計算してから価格を決めたので、”忙しいのに残らない”状態から脱出できました。
「原価率+容器+手数料」で”利益のライン”を決める
テイクアウトで利益を出すためには、感覚ではなく「数字で決めるライン」が必要です。 一般的に、飲食店の原価率は30%前後が目安と言われますが、テイクアウトではここに容器代と手数料が乗ってきます。
例えば、こんな感じです。
- 目標売価:1,000円
- 原価率:30%以内(300円)
- 容器代:50円
- デリバリー手数料:30%(300円)
この場合、300円+50円+300円=650円が”商品あたりのコスト”。 残りの350円から人件費と光熱費を賄い、そこから利益を取る構造になります。 ここで原価率を35%にしてしまうと、300円→350円になり、粗利は300円まで落ち込む。 この50円の積み重ねが、月100食なら5,000円、月500食なら25,000円の差になります。
ケースによりますが、「テイクアウト専用メニューは、原価率+容器代で35%以内」といった基準を決めておくと、価格設計がぶれにくくなります。 正直なところ、ここを決めずに”なんとなく店内と同じ価格”で出していると、後から見直したときにほぼ必ず「もっと高くすべきだった」となりがちです。
テイクアウトで利益を残す設計の考え方
メニューは「テイクアウト専用」で組み立てる
まず大前提として、「店内メニューの単純な持ち帰り」をやめることからです。 テイクアウトは、店内と違って「時間が経つ」「温度が下がる」「見た目が崩れる」といった劣化リスクがあります。 この前提を踏まえると、「テイクアウト専用」で組み直したほうが、味もオペレーションも安定しやすいです。
よくあるのが、
- 丼もの
- カレー
- パスタ(一部)
- 揚げ物系(唐揚げ・フライ)
- オードブルセット
など、”時間が経っても味が安定しやすいメニュー”を軸にするパターンです。
私が関わったカレー店では、店内では3種のカレーを単品で提供していましたが、テイクアウトでは「2種あいがけBOX」「ファミリーカレーセット」の2パターンに絞りました。 単品で選べなくなる代わりに、仕込みのロスが減り、1個あたりの粗利が明確に計算できるようになりました。 実は、お客さんも「選択肢が少ないほうが決めやすい」ケースが多い。 限られたアイドルタイムで効率よく回すなら、”迷わせないメニュー構成”はかなり重要です。
実体験②「日替わり弁当」をやめて、利益が安定した
もうひとつ、別の和食店の事例です。 ランチタイムは「日替わり定食」が人気で、そのまま「日替わり弁当」としてテイクアウトもしていました。 一見良さそうに見えましたが、実際には仕込みが増えすぎてロスが多く、原価も読みにくい状態でした。
ある日、オーナーがぽつりと言いました。
オーナー「正直、日替わりって、やってるこっちがしんどいんですよ。買う側は楽しいんでしょうけどね」
そこでテイクアウトだけは「定番2種類」に固定しました。
- 鶏の唐揚げ弁当(750円)
- 鯖の塩焼き弁当(800円)
日替わりは店内のみ継続。 テイクアウトはこの2種類に絞り、仕込みもこの2本柱を中心に再設計しました。
最初は常連さんから「今日は日替わり弁当ないの?」と言われることもありましたが、2週間ほどで落ち着きました。 その代わり、原価計算がしやすくなり、弁当1個あたりの粗利がはっきり見えるように。 「売上は少し減ったけど、利益が増えた」という、オーナーにとっていちばん嬉しい結果につながりました。
プラットフォームに頼りすぎない集客の筋
テイクアウト強化と言うと、どうしても「Uber Eats」などのデリバリープラットフォームを思い浮かべます。 もちろん、導入する価値はありますが、手数料が30%前後かかることを考えると、”メインの集客源”にするのはかなりシビアです。
これもケースによりますが、個人店ほど以下のような順番をおすすめします。
- 店頭でのテイクアウト(既存客+通行人向け)
- 自店のSNS・LINE・Googleマップでの告知
- そのうえで、プラットフォームは”補助的な窓口”として使う
実は、Googleマップや口コミに写真とメニュー情報を充実させるだけでも、近隣のお客さんからのテイクアウト注文が増えるケースは多いです。 ふとスマホで「店名+テイクアウト」で検索したときに、メニューと価格、写真が見えるかどうか。 ここが整っているだけで、「あ、持ち帰りもできるなら今度頼もう」と思い出してもらいやすくなります。
テイクアウト強化の「よくある失敗」と対策
よくある失敗①「全部テイクアウトOK」でオペレーション崩壊
さきほどの事例とも重なりますが、「基本的に全部テイクアウトOK」にするパターンは本当に多いです。 店内営業が落ち着いている時間ならまだしも、ピークタイムに複雑なテイクアウト注文が入ると、厨房もホールも一気に崩れます。
対策としては、
- テイクアウトに回すメニューを”専用メニュー”に限定
- 使用する食材と調理工程を「共通化」して仕込みを最適化
- 受け取り時間を決め、ピークタイムから少しずらす
これだけでも、現場の体感難易度はかなり違ってきます。 正直なところ、「全部に対応できる店」が強いのではなく、「やることを絞れる店」ほど利益を安定させています。
よくある失敗②「値上げできないまま続けてしまう」
次に多いのが、「最初の価格設定のまま、コストが上がっても値上げできずに続けてしまう」パターンです。 原材料費や容器代がじわじわ上がっているのに、最初の”心理的なライン”に縛られてしまい、「この値段でやると厳しい」と分かっていても変えられない。
ここで有効なのが、
- 一度テイクアウトメニューを「リニューアル」として打ち出す
- 内容を見直し、価格も一緒にアップデートする
- 既存客には、「内容を充実させました」と伝える
たとえば、唐揚げ弁当を700円→780円にする代わりに、 「副菜を1品→2品に増やす」「ご飯の量を選べるようにする」など、”値上げの理由”をセットで用意します。 実は、お客さんは「値上げ」の有無より、「納得できる理由」があるかどうかを見ています。
よくある失敗③「利益が見えないまま走り続ける」
最後は、”数字の見える化”ができないまま、現場の感覚だけで走り続けてしまうパターン。 「なんとなくテイクアウトが増えている」「なんとなく忙しい」のに、 月末に通帳を見るとほとんど増えていない。 頭では「どこかの数字がおかしい」と分かっているのに、日々のオペレーションに追われて手をつけられない。
ここはシンプルに、
- テイクアウトの累計売上
- テイクアウト用の仕入れ(ざっくりでもOK)
- 容器の月間使用数 × 単価
だけでも紙に書き出してみると、だいたいの粗利が見えてきます。 よくあるのが、「思ったより容器代が刺さっている」「手数料を軽く見積もっていた」という気づき。 一度数字で見てしまえば、「このままだとしんどいから、メニューを2つに絞ろう」「価格を50円だけ上げよう」といった判断がしやすくなります。
こういう人は今すぐテイクアウト設計を見直すべき
- テイクアウトの注文は増えたのに、月末の利益がほとんど変わっていない。
- スタッフが「テイクアウト入ると一気にバタつきますよね」と口にすることが多い。
- 容器代とプラットフォーム手数料が、いくらかかっているのか具体的な数字で把握していない。
この状態ならまだ間に合います。 いきなり全部を変えようとせず、「テイクアウト専用メニューを2〜3種類に絞る」「原価+容器代の上限を35%に決める」といった”小さなルール”から整えていくと、現場もついてきやすくなります。 迷っているなら、「まずは紙とペンを出して、今売っているテイクアウト商品の原価と容器代を書き出すこと」から始めるのがおすすめです。
よくある質問
Q1. テイクアウトの売上は、全体の何%を目指すべき?
A1. ケースによりますが、まずは「全体売上の10〜20%」をひとつの目安にすると、オペレーション的にも無理が出にくいです。
Q2. 原価率はどれくらいに設定すべき?
A2. 容器代も含めて35%以内を目標にすると、手数料や人件費を乗せても利益を残しやすくなります。
Q3. デリバリーサービスは必須ですか?
A3. 必須ではありません。手数料が高いため、まずは店頭と自店のSNSでのテイクアウトを固めてから検討するのがおすすめです。
Q4. 店内と同じ価格でテイクアウトして良い?
A4. 内容にもよりますが、原価と容器代を考えると、店内と同じ価格・同じボリュームは厳しいことが多いです。テイクアウト専用設計をしたほうが安全です。
Q5. どれくらいメニューを絞るべき?
A5. 小さな店なら、テイクアウトは2〜5種類に絞るとオペレーションが安定します。選択肢が多すぎると、仕込みと在庫管理が難しくなります。
Q6. アイドルタイムだけテイクアウト営業するのはアリ?
A6. 大いにアリです。ランチ・ディナーとぶつからない時間帯にテイクアウトを集中させると、現場の負担が軽くなります。
Q7. テイクアウト強化と店内営業、どちらを優先すべき?
A7. 利益が出ているほうを優先すべきです。現状、店内のほうが粗利が高いなら、テイクアウトは”補助的な柱”と位置付けるとバランスが取りやすくなります。
Q8. 値上げのタイミングはいつが良い?
A8. 原材料や容器代が明確に上がったタイミング、もしくはメニューリニューアル時が良いきっかけになります。「内容を改善した」というストーリーを添えると伝えやすいです。
まとめ
テイクアウトで利益を出すには、「店内と同じメニューを持ち出す」のではなく、「専用メニュー・専用オペレーション・専用の数字設計」の3点セットが必要です。
原価率+容器代+手数料を加味し、「このラインを超えたら赤字」という数字を決めてから価格設定をすることで、”売れているのに残らない”状態を防げます。
よくある失敗は、「全部テイクアウトOK」「値上げできない」「利益を見ないまま続ける」の3つ。ここを避けるだけでも、体感の疲れ方と口座の残高が変わります。
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