飲食店の強みはどう作る?競争に勝つための考え方
「味・価格・居心地・体験・利便性」から選ぶポジショニング設計術
【この記事のポイント】
強みは「オーナーが思っているウリ」ではなく、「お客さんが人に紹介するときに使う一言」から逆算するとブレにくくなる。
正直なところ、強みを作る第一歩は「ターゲットと捨てるもの」を決めることであって、メニューを増やすことではない。
ケースによりますが、「味」「価格」「居心地」「体験」「利便性」のどれを”トップ3%”にするかを決めると、競合が見えやすくなる。
今日のおさらい:要点3つ
- 強みは「店主の頭の中」ではなく「お客さんの口の中」に隠れている
- 足し算で平均を上げるほど、逆に「この店にしかない理由」はぼやけていく
- 「○○だけは負けない」と言い切れるかどうかが、強みの本質
この記事の結論
一言で言うと、飲食店の差別化は「誰の、どんなシーンに対して、何を一番にするか」を決め、その一点を徹底して磨くことです。
最も重要なのは、「あなたの店を紹介するとき、お客さんは何と言うか?」という”紹介フレーズ”を具体的に作りにいくこと。
失敗しないためには、「全部そこそこ良い店」を目指すのではなく、「この部分なら負けない」と言い切れる要素を1〜2個に絞ることです。
強みがないと感じるとき、裏で起きていること
グルメサイトの口コミを、何度もスクロールしてしまう夜
営業が終わったあと、片付けをしながらふとスマホを開き、グルメサイトの自店ページを見る。 星の数は決して悪くない。 コメントも「おいしかったです」「雰囲気が良かったです」と悪くはない。 でも、何度スクロールしても、「これだ」と言える決め手の言葉が見つからない。 同じエリアの競合店のページを覗くと、「〇〇が名物」「△△目当てで通ってます」と書かれていて、心の中で小さくため息が漏れる。
私も現場の人からよくこんな話を聞きます。
オーナー「正直なところ、”全部ふつうに良い店”にはなれてる気はするんですよ」 オーナー「でも、人に紹介される理由が、自分でもピンと来てなくて」
実は、「強みがない」というより、「強みが言語化されていない」状態の店がほとんどです。 お客さんの頭の中には、「あの唐揚げの店」「あの席が落ち着く店」といった”ざっくりしたイメージ”はあるのに、それを自分たちが把握できていない。 ここにギャップがあると、広告やSNSで何を押せばいいかも曖昧になってしまいます。
実体験① 常連さんの一言で”強み”が見えたビストロ
以前、よく通っていたビストロで、こんなことがありました。 オーナーは、料理へのこだわりが強く、「ウチのウリは前菜とワイン」とずっと言っていました。 でも、ある常連さんが友だちを連れてきたとき、こう紹介していたんです。
常連さん「ここね、深夜1時でも”ちゃんとしたご飯”が食べられる店なんだよ」
その一言を聞いたオーナーが、「実は、ウチの強みって営業時間だったのか…」と少しショックを受けていました。 本人としては料理のクオリティを一番に考えていたけれど、 お客さんにとっての”唯一無二ポイント”は、「遅い時間でも手抜きしてない」ことだった。
そこからこの店は、「23時以降ご飯」にフォーカスしたメニューや投稿を増やし、「終電逃したらここ」というポジションを取りに行きました。 結果、遅い時間の売上が安定し、「深夜帯の強い店」というイメージが口コミでも広がっていきました。
強みは、オーナーの頭の中ではなく、「お客さんの口の中」に隠れていることが多いです。
実は”強みを作る”より”強みを選ぶ”ことのほうが難しい
強みを作ろうとすると、
- メニューの追加
- 内装のアップデート
- サービスの新機能
など、足し算の発想になりがちです。
でも現場で見ていると、「足した」のに強みがぼやけてしまう店が多い。 なぜかというと、強みとは「差」であり、「周りより突出した部分」だからです。 あれもこれも足していくと、平均は上がるかもしれませんが、「この店にしかない理由」は逆に見えにくくなります。
強みづくりで本当に難しいのは、”選ぶこと”と”捨てること”。 「うちは、このラインでは勝負しない」と決めてしまう勇気です。
たとえば、
- 価格でチェーン店に勝とうとしない
- 席数で大型店と張り合わない
- メニュー数でファミレスを真似しない
といった”やらないことリスト”を先に決めてしまう。 その上で、「この部分だけは誰にも負けたくない」と決める。 この順番にすると、強みの輪郭が一気にくっきりしてきます。
飲食店の強みのパターンと「選び方」
「味」「価格」「居心地」「体験」「利便性」のどれで勝つか
ざっくり言うと、飲食店の強みは次の5つのどれか、もしくは組み合わせです。
- 味(クオリティ・独自性・専門性)
- 価格(コスパ・量・安さ)
- 居心地(空間・接客・滞在のしやすさ)
- 体験(ライブ感・ストーリー・特別なシーン)
- 利便性(アクセス・営業時間・テイクアウト・回転の速さ)
「全部大事です」と言いたくなるのですが、正直なところ、全部でトップは取れません。 ケースによりますが、小さな店ほど「2つまで」に絞ったほうが強くなります。
例えば、
味 × 体験 → 「シェフのライブ感を楽しめるカウンター割烹」
価格 × 利便性 → 「ランチ500円台でサクッと食べられるオフィス街の定食屋」
居心地 × 味 → 「長居しても気まずくない、コーヒーがおいしいカフェ」
のように、”掛け算”の組み合わせでポジションを決めていきます。
自分の店にとってどの組み合わせが現実的かは、「立地」「客層」「自分の得意分野」で決めることになります。
現場事例② 「味で勝てない」と認めたカレー店
郊外のショッピングモール内にある小さなカレー店。 オーナーはスパイスにこだわっていて、「味でどこにも負けたくない」と思っていました。 ところが、同じフロアにある有名チェーンのカレー屋と比べると、どうしてもブランド力で負けてしまう。 ある日、オーナーがこう漏らしました。
オーナー「正直なところ、”味だけでチェーンに勝てる気がしない”んですよ」
そこで、発想を変えました。 「味でガチ勝負」はいったん置き、「体験」と「利便性」に振り切ったのです。
- 子ども向けの「自分でトッピングできるカレー」
- 週末限定で、子どもが厨房を少し見学できる時間
- フードコートの中でも、オーダーから提供までを早くする工夫
ショッピングモールという立地もあり、「子どもと一緒に楽しめる」「並んでも回転が早い」という強みが口コミで広がりました。 オーナーは、「味を諦めたわけじゃないけど、勝つフィールドを変えた」と話していました。
強みは、「どこで勝つか」を変えることで生まれることもあります。
自分の店の”紹介フレーズ”を書き出してみる
強みを言語化するうえで、シンプルで効果的なワークがあります。 「常連さんが友人に紹介するときの一言」を想像して、3つ書き出してみることです。
例:
- 「仕事帰りに一人でサクッと寄れる焼き鳥屋」
- 「週末に家族でゆっくりご飯が食べられる店」
- 「お酒が飲めなくても楽しめる、料理がメインのバー」
ここで、「どのフレーズも他の店にも当てはまりそう」と感じるなら、まだ強みがぼやけているサインです。 逆に、「かなりピンポイントだな」と感じるフレーズになっていれば、その方向に強みが眠っています。
正直なところ、ここを自分だけで考えると、どうしても”キレイなキャッチコピー”になりがちです。 できれば常連さん2〜3人に、「友だちにウチを紹介するとしたら、なんて言います?」と聞いてみてください。 その一言が、強みづくりのヒントになります。
強みを「形」にする具体的なステップ
ステップ① 「○○だけは負けない」を1つ決める
まずは、「これだけは絶対に譲らない」という軸を1つ選びます。
- 料理のこのジャンルなら負けない
- この時間帯の使い勝手では負けない
- この価格帯では一番納得感がある
感覚的で構いません。 重要なのは、「自分が本気でこだわれるかどうか」です。 正直なところ、やりたくもないことを”強み”にはできません。続かないからです。
たとえば、私がよく行くラーメン店は、「スープの温度と提供スピードだけは絶対に妥協しない」と決めていました。 その結果、ピークタイムでも回転が速く、スープがぬるいことがほぼない。 店主も、「ここだけは自分でも負けたくない」と言い切っていました。
ステップ② 「強みを体験として感じさせる導線」を作る
強みは、言葉だけではなく「体験」として感じてもらう必要があります。
- 入店してから最初の5分で何が伝わるか
- メニュー表のどこに目が行くか
- 提供される一皿目で、何を感じてほしいか
例えば、「居心地の良さ」が強みなら、
- 席間のゆとり
- 照明の明るさ
- BGMの音量
- スタッフの声のトーン
などが一貫して「落ち着き」を演出している必要があります。
「ガヤガヤ感」「ライブ感」が強みなら、
- オープンキッチンの見せ方
- スタッフの声掛け
- カウンターの距離感
などが、”賑わいの演出”として機能しているかを見ます。
強みは、”点”ではなく”線”。 入口から退店までの一連の体験の中に、どれだけ一貫して強みが感じられるかで決まります。
ステップ③ 強みを「一言で伝える」テキストに落とす
最後に、その強みを「短い言葉」にします。 これは、看板・Webサイト・SNS・チラシ・求人など、あらゆる場所で使える”核”になります。
例:
- 「一人飲みの人が、一番落ち着ける焼き鳥屋」
- 「19時まで、仕事帰りの人専用カレー」
- 「週末は、家族で90分ゆっくりできる洋食屋」
ここでのポイントは、「誰の」「どんなシーンのための店か」を含めること。 “おいしい””アットホーム”だけでは差別化になりません。
実は、この一言を作る過程で、「あ、ウチの強みはここか」と気づけることも多いです。 少し時間をかけてでも、このフレーズだけは妥協せず作りにいく価値があります。
こういう人は今すぐ「強みづくり」に取り組むべき
- 口コミは悪くないが、「この店ならでは」という言葉がほとんど出てこない。
- 新規客はそこそこ来るのに、「あの店じゃないとダメ」という常連が増えない感覚がある。
- チラシやSNS投稿を作るとき、毎回”ウリの言葉”で手が止まる。
この状態ならまだ間に合います。 いきなり大きく変えるのではなく、「誰に」「どんなシーンで」「何を一番にするか」を一度紙に書き出し、常連さん数人に”その答え合わせ”をしてみてください。 迷っているなら、「今日の営業で、常連さんに”ウチを友だちに紹介するとしたら、なんて言います?”と一人だけでいいので聞いてみる」ところから始めるのがおすすめです。
よくある質問
Q1. 強みはひとつに絞るべきですか?
A1. メインの軸は1〜2個に絞ったほうが伝わりやすいです。他の要素は「最低限落とさない」ラインとして考えるとバランスが取りやすくなります。
Q2. 自分では強みが分からないとき、どうすれば?
A2. 常連さん3〜5人に「この店を友だちに紹介するとき、なんて言う?」と聞いてみてください。その言葉の中にヒントが隠れています。
Q3. 強みは途中で変えても良い?
A3. もちろんです。立地や客層の変化に合わせて、強みを進化させていく店も多いです。ただし、一気に180度変えると常連さんが戸惑うので、段階的に調整するのがおすすめです。
Q4. 味と価格、どちらを強みにしやすい?
A4. 競合の多いエリアでは、「味の専門性」か「価格の分かりやすさ」が強みになりやすいです。ただし、価格勝負は長期戦になりやすいので、体力との相談が必要です。
Q5. 強みが競合と被っている気がします…
A5. 被っていると感じるなら、「誰に」「どの時間帯に」「どんなシーンで」を一段深く絞ってみてください。同じ”唐揚げ”でも、ターゲットとシーンが違えば十分差別化になります。
Q6. SNSで何を発信すれば強みが伝わる?
A6. 強みと関係のない情報を減らし、「その強みが伝わる写真・ストーリー」を優先することです。たとえば”深夜ご飯”が強みなら、その時間帯の様子を中心に発信します。
Q7. 強みを変えたら、常連客が離れませんか?
A7. 変え方次第です。今の強みを完全に否定するのではなく、「今の良さを残しつつ、ここを少し伸ばしていきます」と説明すると、むしろ応援してくれる常連さんも多いです。
Q8. 小さな店でも、強みを打ち出す意味はありますか?
A8. むしろ小さな店ほど「ここならでは」が必要です。席数で勝てないからこそ、”理由”で選んでもらう必要があります。
まとめ
飲食店の強みは、「おいしい」「安い」といった一般的な言葉ではなく、「誰のどんなシーンに対して、何を一番にするか」を決めて初めて輪郭がはっきりします。
強みづくりは、”足し算”より”選ぶこと・捨てること”が本質であり、「味・価格・居心地・体験・利便性」のどこで勝つかを2つまでに絞ると、動きやすくなります。
自分で考えるだけでなく、「常連さんの紹介フレーズ」をヒントにしながら、体験設計とメッセージ(ひと言フレーズ)を揃えていくと、”この店じゃないとダメな理由”が自然とできていきます。
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