飲食店のFLコストとは?利益を残す数字の見方
飲食店のFLコストとは?計算方法と利益を残すための目安
【この記事のポイント】
FLコストとは、食材費(Food)と人件費(Labor)を合わせた数字です。飲食店の利益は、ここが売上の何%かでほぼ決まります。目安は売上の60%以内。超えると手元にお金が残りません。まず計算、次に食材か人件費のどちらが重いかを見る。順番はこれだけ。感覚で経営していた店ほど、この一つの割合を出すだけで景色が変わります。
実際、日本政策金融公庫の調査でも、飲食業は他業種に比べて原価と人件費の比率が高く、利益が薄くなりやすい構造が指摘されています。売上が伸びても手残りが増えない店の多くは、FLコストが65%、70%と静かに膨らんでいる。正直なところ、月末の通帳を見て「これだけ働いたのに」と感じる原因の大半は、ここにあります。
この記事では、FLコストの計算方法から、FL比率の目安、食材費と人件費のどちらから手をつけるべきかの判断、改善の順番までを、現場の実例と数字を交えて整理します。読み終えたら、自分の店のFL比率を今日中に出せる状態を目指します。
今日のおさらい:要点3つ
- FLコスト=食材費+人件費。FL比率(売上に対する割合)の目安は60%以内。ここが利益を残せるかの分岐点。
- 計算は「(食材費+人件費)÷売上×100」だけ。まず数字を出し、FとLのどちらが重いかを切り分けるのが最初の一歩。
- 改善は削るより「配分の見直し」から。原価率を無理に下げると質が落ち、客離れで売上が減る。順番を間違えない。
この記事の結論
一言で言うと、FLコストは「その店が利益を残せる体質かどうか」を映す一枚の鏡です。最も重要なのは、60%という目安を絶対視することではなく、自店のFとLの内訳を毎月見て、崩れたときに早く気づけること。数字を出す習慣がある店は、赤字になる前に手を打てます。
「売上はあるのにお金が残らない」の正体はFLにある
締め作業のあと、電卓を叩いては手を止めてしまう
営業を終え、レジを締めて、今日の売上を確認する。数字はそこそこ悪くない。それなのに、月末に仕入れ先への支払いとスタッフの給料日が重なると、通帳の残高がすっと薄くなる。電卓を叩いて、また途中で手を止める。どこにお金が消えているのか、感覚ではつかめない。「忙しかった月ほど、なぜか残らない」という違和感を、そのまま翌月に持ち越してしまう。よくあるのが、こういう状態です。
売上という一番目立つ数字だけを見て、その裏でFとLがいくら出ていったかを見ていない。忙しい月は仕入れも増え、人も多く入れる。だから売上と一緒にFLも膨らむのに、そこに目が向かない。手元に残らない理由は、実は売上の側ではなく、費用の割合の側に隠れています。
実体験①:FL比率68%だった居酒屋が気づいたこと
ある郊外の居酒屋の話です。月商はおよそ400万円、本人の感覚では「そこそこ回っている店」でした。ところがFLを計算してみると、食材費が140万円、人件費が132万円。合計272万円で、FL比率は68%。目安の60%を8ポイントも超えていました。金額にすると、あるべき水準より毎月30万円以上が余計に出ていた計算です。
内訳を切り分けると、原価率は35%とやや高め、人件費率は33%。特に「暇な平日にもピーク時と同じ人数を入れていた」ことが人件費を押し上げていました。そこでシフトを客数連動に組み直し、ドリンクの構成を少し見直しただけで、翌々月にはFL比率が61%まで下がった。売上はほぼ据え置きです。店主は「削ったというより、ムダに払っていた分を止めただけ」と話していました。
「原価率は見ているから大丈夫」という思い込み
実は、原価率だけを気にしている店は少なくありません。けれど原価(F)だけ30%以内に抑えても、人件費(L)が38%あればFLは68%。これでは利益は残りません。逆に、多少原価が高くても人がスリムに回っていれば、FLは収まる。FとLはシーソーのような関係で、片方だけ見ても店の体力はわからない。二つを足して初めて意味を持つ、というのがFLコストの考え方です。
FLコストの計算方法と、正しい読み方
計算式はシンプル、拾い漏れに注意
計算式は「(食材費+人件費)÷売上×100」。これだけです。たとえば月商300万円で、食材費90万円・人件費90万円なら、(90+90)÷300×100でFL比率は60%。難しさは式ではなく、数字の拾い方にあります。食材費はドリンクや調味料、廃棄した分も含める。人件費は、社員給与だけでなくアルバイト代、まかない、社会保険料の会社負担分、そして店主自身の給料(役員報酬)まで入れる。ここを抜くと、実態より低いFLが出て安心してしまうので危険です。
目安は、F(原価率)が30%前後、L(人件費率)が30%前後、合わせて60%以内。ただし業態で幅があります。原価の高い焼肉や寿司はFが35%を超えることもあり、その分Lを25%前後に抑えてバランスを取る。逆に、仕込みに手間のかかるカフェや居酒屋はLが上がりやすいので、Fをやや抑える。60%はあくまで基準線で、自店の業態に合わせた「目標FL」を持つことが大切です。
実体験②:FLは55%なのに苦しかった洋食店
もう一つ、逆のケースです。ある個人経営の洋食店は、FL比率が55%と数字だけ見れば優秀でした。それでも資金繰りは苦しい。理由を一緒に探ると、家賃と水道光熱費を含めた固定費が売上の28%もあった。FLが低くても、家賃比率が高すぎて利益が消えていたのです。店主は「FLさえ良ければいいと思い込んでいた」と苦笑いしていました。
ここで有効なのが、FLに家賃(Rent)を足した「FLR」で見る発想です。FLRの目安は売上の70%前後。この店はFL55%+家賃28%で83%。残り17%からその他経費を払えば、利益はほとんど残りません。FLは万能ではなく、家賃の重い立地では別の指標も並べて見る必要がある。ケースによりますが、数字は一つだけを盲信しないことが肝心です。
現場の声:FLをめぐる店長との会話
店長「FLが高いって言われても、うちは食材にこだわってるんで原価は下げたくないんです」
運営担当「下げなくていいんです。Fが高いなら、Lか客単価のどちらかで帳尻を合わせる発想に切り替えましょう」
店長「客単価…って、値上げですか?」
運営担当「いえ、ドリンクや一品料理をもう一つ頼んでもらう工夫です。分母の売上が増えれば、FL比率は自然に下がりますから」
店長「なるほど、割合の話だから分母を動かす手もあるのか」
FL比率は割合です。だから改善の道は二つ。分子(FとL)を減らすか、分母(売上)を増やすか。原価を守りたい店ほど、分母を動かす方向で考えると無理がありません。削るだけが答えではない、というのは現場でよく見落とされる視点です。
改善の順番を間違えない、優先度の判断基準
まず「FとLどちらが重いか」を切り分ける
FLが高いとわかったら、いきなり両方に手をつけないこと。まずFとLを分けて、目安(各30%前後)からどちらがより外れているかを見ます。Fが35%超ならロス・歩留まり・仕入れの見直し、Lが35%超ならシフトと生産性の見直し。重い方から一つずつ。両方いっぺんに削ると、料理の質もサービスも同時に落ちて、結局売上が減るという最悪の展開になりがちです。
原価を無理に削ると、客離れで売上が落ちる
よくある失敗が、FLを下げたい一心で食材のグレードを落とすこと。量を減らす、安い産地に変える。短期的には原価率が下がりますが、常連はその変化に驚くほど早く気づきます。「前より味が落ちた」と感じた客は、黙って来なくなる。売上(分母)が減れば、FL比率はかえって悪化する。原価は「削る」より、廃棄ロスを減らす・歩留まりを上げる・仕入れ交渉で単価を下げるといった、質を落とさない手から着手するのが鉄則です。
人件費は「時間あたりの売上」で見る
人件費を減らす、と聞くと時給や人数を削る話になりがちですが、本質は「人時売上高(にんじうりあげだか)」、つまりスタッフ1人が1時間で生む売上をどう上げるかです。目安は業態にもよりますが、5,000円前後が一つの基準。暇な時間に人が余っていないか、逆にピークで人手が足りず提供が遅れて回転を落としていないか。多能工化や仕込みの前倒しで一人あたりの生産性を上げれば、人を減らさなくてもL比率は下がります。他店の数字を鵜呑みにせず、自店の時間帯別で判断するのが公平な見方です。
こういう店は、今月からFLを出すべき
売上は悪くないのに手元に残らない、原価率しか見ていない、店主自身の給料を人件費に入れずに計算している、そもそもFL比率を一度も出したことがない。どれか一つでも当てはまるなら、後回しにする理由はありません。今月の食材費と人件費を売上で割る、たった一回の計算から始めればいい。完璧な会計は要りません。ざっくりでいいので、まず自店の数字を知ること。
経営は、勘だけでは続きません。けれど数字は、味やサービスへの情熱を否定するものでもない。FLを毎月出す習慣は、こだわりを守りながら店を続けるための道具です。難しく考えなくて大丈夫。足して、割って、去年の同じ月と比べる。この三つを今月から。
よくある質問
Q1. FLコストとFL比率は何が違いますか?
A1. FLコストは食材費+人件費の「金額」、FL比率はそれを売上で割った「割合(%)」です。経営判断で使うのは主にFL比率。目安は60%以内と覚えてください。
Q2. FL比率の目安60%はどんな店でも同じですか?
A2. 60%は基準線で、業態で幅があります。原価の高い焼肉・寿司はFが上がる分Lを抑え、カフェ・居酒屋はその逆。自店に合った目標FLを持つのが正解です。
Q3. 人件費に店主自身の給料も含めるのですか?
A3. 含めます。役員報酬やまかない、社会保険料の会社負担分まで入れて計算します。ここを抜くと実態より低いFLが出て、判断を誤ります。
Q4. FとL、先に手をつけるのはどちらですか?
A4. 目安(各30%前後)からより大きく外れている方からです。両方を同時に削ると質もサービスも落ちて売上が減ります。重い方を一つずつが原則。
Q5. FLを下げるには原価を削るしかないですか?
A5. いいえ。FL比率は割合なので、分母の売上を増やしても下がります。客単価アップや廃棄ロス削減など、質を落とさない手が先。原価カットは最後の手段です。
Q6. FLだけ見ていれば経営は安心ですか?
A6. FLは重要ですが万能ではありません。家賃が重い店は、FLに家賃を足したFLR(目安70%前後)でも確認を。数字は一つを盲信せず複数で見ます。
Q7. FLはどのくらいの頻度で計算すべきですか?
A7. 毎月が基本です。月次で出し、前月や前年同月と比べる。変化に早く気づける店ほど、赤字になる前に手を打てます。年に一度では遅すぎます。
Q8. FL比率が70%を超えていたら、もう手遅れですか?
A8. 手遅れではありません。多くの店は原因がFかLのどちらかに偏っています。切り分けて重い方から直せば、数か月で60%台に戻せるケースも珍しくありません。
まとめ
FLコストは、食材費と人件費を合わせた、店の利益体質を映す数字です。計算は「(食材費+人件費)÷売上×100」だけ。目安は60%以内ですが、業態に応じた自店の目標FLを持つことが本当のゴールです。改善は削るより、FとLのどちらが重いかを切り分け、質を落とさない手から順に。分母である売上を動かす発想も忘れないでください。
味づくりへの情熱と、数字を見る冷静さは、どちらも店を続けるために必要です。今月の食材費と人件費を、まず一度だけ売上で割ってみる。その一回が、来月からの判断を確実に変えます。小さな計算が、こだわりを守り抜くための土台になります。
名古屋の飲食店選びを、ブランド思想から考える
飲食店の成功は、料理や立地だけで決まるものではありません。どのような価値を届け、誰に選ばれる店を目指すのかという「ブランド思想」も、来店後の満足度を左右します。
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