飲食店の在庫管理は重要?ロスを減らす基本の考え方

「見える在庫」と日報の一行から始める、無理のないロス削減ステップ

【この記事のポイント】

飲食店の在庫管理は、ロスを減らすだけでなく、原価率とキャッシュフローを守るための“保険”でもあります。

本記事では、冷蔵庫の奥から3か月前のホタテが出てきた居酒屋の話や、日報の一行からロスが見えてきた小さなビストロの事例を交えながら、現場で無理なく続けられる在庫管理の進め方を紹介します。

今日のおさらい:要点3つ

  • 在庫管理は「足りないのを防ぐ」だけでなく、「余らせない」「使い切る」「不正を防ぐ」の4つを同時に見る仕事です。
  • 日次・週次・月次でチェックするポイントを決めると、感覚ではなく数字でロスを把握でき、原価率のブレが小さくなります。
  • 正直なところ、完璧を目指す必要はなく、「よく出る食材」「高価な食材」から順番に管理レベルを上げていくだけでも、ロスは着実に減っていきます。

この記事の結論

一言で言うと「在庫管理は“原価率とキャッシュフローを守る保険”」です。

最も重要なのは、売上に直結するAランク食材(よく出る・高価なもの)を中心に、日々の在庫量と使用量を数値で追いかけることです。

失敗しないためには、「すべてを一気に管理しようとしない」「仕入れ担当を1人に丸投げしない」「棚卸しを“イベント”にせず習慣化する」の3つを避けることです。

なぜ在庫管理が飲食店にとって重要なのか

在庫は“お金の形を変えたもの”

在庫は「いつか使う食材」ではなく、「まだ売れていないお金」です。冷蔵庫やストッカーを開けると、そこに詰まっているのは、そのまま現金の束だと考えた方が現実に近い。

在庫が多すぎると、

  • 現金が寝ている状態が続く
  • 廃棄・劣化でロスが出る
  • 仕入れ金額が高止まりする

在庫が少なすぎると、

  • 欠品で売上のチャンスを逃す
  • メニュー変更やお断りが増える
  • スタッフのストレスが増える

という両極端になります。

正直なところ、「今日は忙しかったから多めに仕入れておこう」「心配だから余裕を持ってもっておきたい」という気持ちはよく分かります。でも、その“安心の在庫”が積み重なると、じわじわと利益を削っていきます。

【実体験1】冷蔵庫の奥から出てきた、誰も覚えていないホタテ

ある居酒屋で在庫管理の見直しを手伝ったときのことです。月末に冷凍庫を開けると、奥の方から大きなホタテの箱が出てきました。

  • 店長「これ、いつのだろう…」
  • スタッフ「前の季節メニューのやつじゃないですか?」

ラベルを見ると、仕入れからすでに3か月以上経過していて、商品の安全性を考えて廃棄せざるを得ませんでした。

  • 仕入れ:1箱7,000円
  • 使ったのは一部だけで、残り5,000円分はロス

月に1〜2回こうした“忘れられた在庫”が出てくると、それだけで年間数十万円のロスになります。帳簿上は「原価」として計上されますが、実際は1円も売上を生んでいない、という怖さです。

在庫管理は「原価率」と「キャッシュフロー」を安定させる

在庫管理がしっかりしている店ほど、

  • 月ごとの原価率のブレが小さい
  • 仕入れの支払いと売上の入金のバランスが安定している

という特徴があります。

逆に、在庫が感覚頼りだと、

  • 月末に「思ったより原価率が高い」と焦る
  • 支払いに追われて常に資金繰りを考えなければならない

状態になりがちです。

正直なところ、売上を急激に増やさなくても、「同じ売上でロスと原価率を5ポイント抑える」だけで、手元に残るお金はかなり変わります。その鍵を握っているのが在庫管理です。

ロスを減らす在庫管理の基本の考え方

1. 「何を優先して管理するか」を決める

在庫管理の最初の失敗は、「全部を同じレベルで管理しよう」とすることです。現実には、食材には重要度の差があります。

よく出る・高価な食材ほど、在庫管理の優先度を上げます。

Aランク(最優先)

  • 牛肉・刺身用魚・高級食材・酒類など
  • 売上への影響が大きく、単価も高い

Bランク

  • よく出るが比較的安価な食材(鶏もも肉、玉ねぎなど)

Cランク

  • 使用頻度が低い・安価な調味料など

正直なところ、Cランクまで毎日きっちり数えるのは現実的ではありません。まずはAランクから、「毎日どれくらい減っているか」「想定通りか」を見るだけでも、ロスはかなり見えてきます。

2. 「日次・週次・月次」で見るポイントを分ける

在庫管理には、見るべき“リズム”があります。

日次

  • 仕入れと使用量のざっくりチェック
  • 主要食材の在庫確認(Aランク)

週次

  • 売上に対する原価の比率(原価率)の確認
  • ロスの発生状況(廃棄・まかない)

月次

  • 棚卸し(在庫を数えて金額に換算)
  • 原価率とロス率の総点検

よくあるのが、「棚卸しを月に1回だけやって、あとは何となく」というスタイルです。この場合、問題に気づくのが常に後になり、対策も“後追い”になりがちです。

日次と週次でざっくり傾向をつかんでおくと、「今月は原価が重いな」と感じたときに、すぐ手を打てます。

【実体験2】“日報の一行”からロスが見えてきた小さなビストロ

小さなビストロで在庫を見直した際、最初から完璧な棚卸しは目指しませんでした。代わりに、日報に一行だけ追加しました。

「今日、ロスが出た食材とその理由」

シェフには、「完璧な数字はいらないから、“あ、これは無駄にしちゃったな”と思ったものだけ書いてください」と伝えました。

1週間、2週間と続けていくと、

  • パンの焼き過ぎ
  • サラダの仕込み過多
  • デザートの仕込み数の読み違い

など、ロスの傾向が見えてきました。

1か月後、シェフはこう言いました。

「書き出してみると、“ああ、ここ削れるな”って自分で分かってきますね」

この“気づき”が、在庫管理のスタートラインです。

在庫管理でよくある失敗と、その裏側

よくある失敗1:「安い食材だから」と油断してしまう

正直なところ、高価な食材には自然と目が行きます。でも、「安いから」と油断していると、

  • 調味料の大量廃棄
  • 野菜の使い切り失敗
  • パンや麺類の仕込み過多

などで、まとまったロスになっていきます。

米や油、調味料などは単価は安くても、使用量が多いため、年間で見ると大きなコストです。ここを完全に細かく管理するのは大変ですが、「仕入れ単位」と「1日あたりの平均使用量」くらいは把握しておきたいところです。

よくある失敗2:在庫管理を「一人の頭の中」に閉じ込めてしまう

よくあるのが、

  • 仕入れをすべて店長一人が担当
  • 頭の中の感覚で発注している
  • 誰も発注基準を知らない

という状態です。

こうなると、その人が休んだり退職したときに、在庫管理が一気に崩れます。

「このくらいあれば足りる」という経験値はとても大事ですが、それをせめてざっくりと数字に落としておかないと、属人化から抜け出せません。

よくある失敗3:棚卸しを「苦行のイベント」にしてしまう

月末の棚卸しを、「毎回夜中までかかる行事」にしてしまう店も多いです。

  • 何がどこにあるか分からない
  • ラベルがない・日付が読めない
  • 探しながら数えるので、時間ばかりかかる

正直なところ、ここまで来ると、「棚卸しが大変だから、なるべく見たくない」という心理が働きやすくなります。

在庫管理をラクにするには、「普段から整理しておく」ことが一番の近道です。

現場で無理なくロスを減らす“行動ステップ”

ステップ1:冷蔵庫・冷凍庫の「定位置」を決める

在庫を管理しやすくするには、まず探さなくても見つかる状態を作ることです。

  • 冷蔵庫と冷凍庫の中身をカテゴリーごとに分ける
    • 肉・魚・野菜・乳製品・デザートなど
  • 棚ごとに「ラベル」を貼る
    • 例:「肉類」「魚」「仕込み済み」

実は、これだけでもロスはかなり減ります。

【現場の声】

  • スタッフ「前は、何がどこにあるか毎回先輩に聞いてました…」
  • 店長「ラベルを貼ってから、探す時間が減ったし、“ここにない=ない”ってすぐ分かるようになった」

「見える在庫」にすることで、感覚ではなく目で在庫を把握できるようになります。

ステップ2:仕入れ量を“ざっくりフォーマット”にする

細かすぎる発注表は続きません。まずはざっくりでいいので、「曜日別」「イベント別」に仕入れ量の目安を書き出します。

  • 平日:鶏もも○kg、豚バラ○kg…
  • 土日:+20%
  • 祝日前:+30%

など。

正直なところ、最初から正確な数値にはなりません。ただ、「いつも感覚で多めに仕入れていたもの」を紙に出すだけで、「ここは少し減らしてもいけそうだな」という気づきが生まれます。

ステップ3:「こういう人は今すぐ在庫管理を見直すべき」をチェックする

ここで一度、背中押しの話をします。

こういう人は今すぐ相談すべきです。

  • 冷蔵庫の奥に“よく分からないタッパー”がいくつも眠っている
  • 月末に原価率を見て「理由は分からないけど高い」と感じている
  • 仕入れの支払いが重くて、毎月の資金繰りにため息が出る

逆に、

  • 日次でAランク食材だけは在庫をチラ見している
  • 月1で棚卸しはしている(時間はかかるけれど)

という状態なら、この状態ならまだ間に合うので、「Aランク食材の棚にだけラベルを貼る」「日報に“今日のロス”を一行書く」といった小さなところから始めれば十分です。

迷っているなら、「1か月でロスをいくらまでに抑えられたら嬉しいか」をざっくり数字で決めるのがおすすめです。

よくある質問

Q1:在庫管理で一番最初にやるべきことは何ですか?

A1:冷蔵庫・冷凍庫の中身をカテゴリーごとに分け、ラベルを貼って「見える在庫」にすることです。ここができるだけで棚卸しと発注がラクになります。

Q2:毎日全部数えるのは現実的ではありません。どうすれば?

A2:全部を数える必要はありません。よく出る・高価なAランク食材だけ、日次で数量をざっくりでも把握するところから始めるのが現実的です。

Q3:ロスはどれくらいまでが許容範囲ですか?

A3:業態によりますが、売上に対するロス率をまずは「見える化」し、現状から1〜2ポイント減らすことを目標にするのが現実的です。

Q4:在庫管理用のシステムは必須ですか?

A4:必須ではありません。小規模店なら、エクセルや紙の表でも十分機能します。売上規模や品数が増えてきたら、検討するくらいで問題ありません。

Q5:棚卸しは月に何回行うのが理想的ですか?

A5:最低でも月1回は必要です。原価率のブレが気になるようなら、主要食材に限って週1の簡易棚卸しを追加するのも有効です。

Q6:ロスをまかないに回せば問題ないですか?

A6:まかないに回すのは有効ですが、それでも原価は発生しています。「なぜ余ったのか」を振り返らないと、根本的なロス削減にはつながりません。

Q7:仕入れ先を変えるべきかどうかの判断は?

A7:価格だけでなく、ロット(仕入れ単位)と納品頻度も重要です。安くても大量ロットしかない場合、ロスが増えればトータルでは損になることもあります。

Q8:在庫管理をスタッフに任せるのが不安です。

A8:完全に丸投げするのではなく、「Aランクは店長、Bランクはスタッフ」といったように役割を分け、定期的に一緒にチェックする形が安全です。

Q9:急な団体予約が多く、在庫が読みづらいです。

A9:団体予約の有無で「追加仕入れリスト」を別に持っておくと、通常営業用の在庫と混ざりにくくなります。

Q10:在庫管理は数字が苦手でもできますか?

A10:できます。細かい計算よりも、「どれくらい使って、どれくらい余ったか」をざっくり書き出すことから始めれば十分です。

まとめ

在庫管理は、「足りないのを防ぐ」だけでなく、「余らせない」「使い切る」「不正を防ぐ」ことで原価率とキャッシュフローを守る、飲食店の生命線です。

すべてを完璧に管理しようとするのではなく、よく出る・高価な食材(Aランク)から優先的に「見える化」し、日次・週次・月次で見るポイントを分けることで、無理なくロスを減らせます。

正直なところ、在庫管理の一歩目は「冷蔵庫のラベル」と「日報の一行」です。小さな習慣が積み重なると、気づいたときには原価率と心の余裕が少しずつ変わっていきます。

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