飲食店の原価率はどれくらい?利益を守るための目安と考え方

家賃・人件費・客単価とのバランスで利益を残す数字の作り方

【この記事のポイント】

原価率は「30%が正解」ではなく、「家賃と人件費とのバランスで決める指標」として使うとブレにくい。

正直なところ、原価率だけを気にしても、客数や客単価、ロスの管理がザルだと利益はほとんど残らない。

ケースによりますが、「看板メニューは35%前後」「その他は25〜30%」のように”山と谷”をつくると、満足度と利益の両立がしやすい。

今日のおさらい:要点3つ

  • 原価率を3%下げるより、客単価を200円上げるほうが利益増につながりやすい
  • お客さまは「単品の原価率」ではなく「その席全体で払った金額に対する満足度」で判断している
  • 完璧な原価計算より、「よく出る10品だけ原価を出す」ところから始めれば傾向は十分掴める

この記事の結論

一言で言うと、飲食店の原価率は「全体で30%前後を目安にしつつ、メニューごとにメリハリをつけて設計する」のが現実的なやり方です。

最も重要なのは、「原価率だけ」ではなく、「家賃比率・人件費率・客単価」と一緒に数字を見て、「この原価率なら月◯万円残せる」という自店のルールを決めること。

失敗しないためには、「全部のメニューを同じ原価率に揃えよう」とせず、「集客用の高原価メニュー」と「利益を支える低原価メニュー」を意図的に作ることです。

原価率の”数字”だけを追いかけて、モヤモヤしてしまう理由

レジを締めたあと、つい電卓を叩いてしまう夜

閉店後。 レジを締めて、売上の数字を見たあと、ついスマホの電卓アプリを開いてしまう。 「今日の仕入れが…◯万円だから、ざっくり原価率は…」と計算してみるけれど、正直ピンとこない。 売上は悪くないはずなのに、口座の残高はじわじわ減っている気がして、心の中で小さくため息が漏れる。

「困っている」と口にするほどではないけれど、 どこかで「このまま続けて大丈夫なのかな」という不安が、静かな時間になるほど顔を出してきます。

正直なところ、原価率の数字だけを見ても、「で、これって良いの?悪いの?」と迷ってしまう人がほとんどです。 実は、原価率は”それ単体では意味が半分しかない”指標です。 家賃・人件費・客単価とセットで考えないと、「原価率だけ良い店」「原価率だけ悪く見える店」に分かれてしまいます。

私自身、知り合いのオーナーさんからこんな相談を受けたことがあります。

オーナー「ウチ、原価率28%なんですよ。悪くない数字らしいんですけど…」 私「聞く限り悪くないですね」 オーナー「でも毎月、なぜか現金が残らないんです」

話をよく聞くと、家賃比率が20%を超え、人件費も40%近くまで膨らんでいました。 つまり、原価率だけは優秀でも、他のコスト構造のせいで利益が残らない状態になっていたわけです。 このとき、「原価率は”単独の正解”を探す数字じゃない」と強く感じました。

現場事例① 原価率25%なのに、なぜか苦しい店

以前、郊外の和食店をお手伝いしたときの話です。 しっかり原価管理をしていて、月の原価率は25〜27%の間。 聞くだけなら「優秀な店」に聞こえます。

でも、オーナーの顔色はあまり晴れませんでした。

オーナー「原価率は悪くないって言われるんです。でも、正直ラクじゃないんですよね…」

数字を見ていくと、家賃は売上の15%、人件費は35%前後。 原価+家賃+人件費だけで75〜80%が消えていて、残り20〜25%から光熱費や雑費、借入返済を出さないといけない状況でした。

原価率だけなら”優等生”。 でも、全体のバランスを見ると、利益が残りにくい構造だったんです。

そこで、

  • 原価率の低い「おつまみ系メニュー」をいくつか追加
  • 原価率の高い刺身系は”おすすめメニュー”として数量限定に
  • 客単価アップ狙いで「飲み比べセット」を導入

といった施策を少しずつ入れていきました。 結果として、原価率は28〜29%まで少し上がりましたが、客単価と回転率が上がったことで、月の利益額はむしろ増えました。 「原価率が低い=正義」ではない、という良い実例です。

原価率は「利益率」のための”部品”でしかない

原価率に悩むとき、いちど視点を変えてみると楽になります。 原価率は目的ではなく、「利益を残すための一つの部品」に過ぎません。

ざっくりですが、飲食店のPL(損益)をかなり簡略化すると、こうなります。

  • 売上100%
  • 原価30%
  • 粗利70%
  • 人件費30%
  • 家賃10%
  • その他経費(光熱費・広告・雑費など)20%
  • 営業利益10%

この形を基準に、 「ウチは原価を何%にするか」「家賃・人件費がどれくらいなら耐えられるか」を調整していくイメージです。 原価率だけをいくら頑張っても、客数・客単価・回転率とのバランスが崩れていると、トータルでは苦しくなります。

実は、「原価率を3%下げる」より、「客単価を200円上げる」「月の来店数を5%増やす」「ロスを減らす」ほうが、ラクに利益が増えるケースも多いです。 原価に意識が向きすぎて、本当にテコ入れすべきポイントが見えなくなるのはもったいない状態です。

業態別の原価率の目安と考え方

一般的な目安と「自店ルール」の作り方

業界では、ざっくりとした原価率の目安がよく語られます。

  • 居酒屋:30〜35%
  • カジュアルレストラン・カフェ:25〜35%
  • 高級店:40%前後もアリ(その分客単価が高い)

ただ、これはあくまで”平均的な目安”です。 大事なのは、「自分の店で、いくら残したいのか」から逆算して原価率のラインを決めることです。

例えば、毎月50万円の営業利益を目標にしている場合。

  • 月商:300万円
  • 営業利益目標:50万円(約17%)

とします。

他の費用(家賃、人件費、光熱費など)とのバランスから、「原価率は30%以内にしたい」と決める。 そのうえで、

  • 看板メニュー:35%前後
  • その他メニュー:25〜30%

と”山と谷”を作ることで、平均として30%に着地させるイメージです。

現場事例② 「看板メニューだけ高原価」でリピートが増えた店

ある駅近のビストロでは、開店当初、全メニューを原価率25〜28%に揃えていました。 原価だけ見れば優秀ですが、常連さんからこんな声が出てきました。

お客さま「どれも美味しいけど、”これを食べに来た”っていう一皿がまだない感じかな」

オーナーも、「確かに、もう一度来たくなる”決め手”が薄いかも」と感じていました。

そこで、

  • 看板メニューとなる肉料理だけ、原価率を35〜40%にアップ
  • その代わり、前菜やサイドは20〜25%に抑える

というメリハリのある設計に変更しました。 価格は肉料理だけ少し高めに設定しつつ、「この肉だけはとにかく満足してほしい」というボリュームと質を優先。

結果、「あの店の◯◯が食べたい」という指名来店が増え、客単価も約500〜800円アップ。 原価率は全体で30%前後まで上がりましたが、利益額は明らかに増えました。 原価率の”平均点”を狙うより、「ここはあえて点数を上げる」「ここは抑える」と考えたほうが、店としての魅力と数字の両方が整いやすくなります。

テイクアウト・デリバリーは「容器+手数料」も含めて見る

原価率を考えるとき、テイクアウトやデリバリーの原価率は少し別枠で見たほうが安全です。 店内と違い、

  • 容器代(1個あたり30〜80円)
  • デリバリー手数料(売上の◯%)

が追加でかかるからです。

例えば、1,000円のお弁当を販売している場合、

  • 食材原価:300円(30%)
  • 容器代:50円
  • 手数料:300円(30%)

合計650円が「原価的コスト」と考えられます。 ここに人件費や光熱費が乗るので、店内より「少し原価率を抑えた設計」が必要になるケースが多いです。

「テイクアウトは原価+容器代で35%以内」といった、自店なりの基準を持っておくと、価格設定で迷いにくくなります。 実は、テイクアウトを”なんとなく店内と同じ原価率”でやってしまうと、「売れているのに利益が残らない」状態に陥りがちです。

原価率を改善するときの具体的な手順

まず「現状の原価率」をざっくり見える化する

改善の前に、今の状態をざっくりでも把握することが大事です。 細かいところから始めると続かないので、最初はこんなレベルでOKです。

  • 月間の食材仕入れ額 ÷ 月商 = 月間の原価率
  • よく出る10品の原価をざっくり算出してみる
  • 特に出数が多いメニューの原価率をメモ

ここで大事なのは、「正確さより、傾向を知ること」です。 よくあるのが、

  • 看板メニューが想定より高原価だった
  • 意外と、原価率の高いメニューばかり出ていた

という発見です。

正直なところ、一品一品を完璧に計算しなくても、「上位10品」だけ原価を出せば、店の傾向はかなり見えてきます。

「減らす」より「整える」発想でメニューを見直す

原価率の話になると、「とにかく原価を削る」という発想になりがちです。 でも、単純に食材やボリュームを削るだけだと、お客さまの満足度が落ちて、リピートが減るリスクがあります。

おすすめは、

  • 原価が高いのにあまり出ていないメニューを一度下げる・なくす
  • 同じ食材を使って、別メニューを組み立てる(ロス削減)
  • 「セットにすると原価率が下がる」組み合わせを作る

といった、”整える方向”の見直しです。

たとえば、原価率40%の刺身単品があるなら、

  • 量を少し減らして価格を調整
  • 他の一品とセットにして、セット全体で30%台に落とす

などが考えられます。 実は、お客さまは「単品の原価率」ではなく、「その席全体で払った金額に対する満足度」で判断しています。

値上げ・値下げの基準を数字で決める

最後に、原価率を改善するうえで避けて通れないのが”価格の見直し”です。 ここも、「なんとなく」で決めるとモヤモヤしたままになります。

例えば、こんな基準で考えると整理しやすくなります。

  • 原価率が40%を超えているのに、出数が多くない ⇒ 内容を見直すか、思い切ってメニューから外す
  • 原価率が30〜35%だが、看板メニューとしてよく出る ⇒ そのまま、もしくは少し値上げしつつ質を維持
  • 原価率が20〜25%で、よく出る ⇒ 「利益の柱」として、セットやコースに組み込みやすくする

迷ったときは、「このメニューを10個売ったとき、粗利はいくらか」を計算してみると判断しやすくなります。 数字で見ると、「思ったより利益が取れていない」「逆にこれはもっと推したほうがいい」という感覚が掴みやすくなります。

こういう人は今すぐ原価率を見直すべき

  • 月の売上はそれなりにあるのに、手元にほとんど現金が残っていない。
  • 「食材の注文はなんとなく」で、正確な原価率をしばらく計算していない。
  • メニューを増やしてきた結果、自分でも「どれが一番儲かっているのか」よく分からなくなっている。

この状態ならまだ間に合います。 いきなり全メニューを見直すのではなく、「よく出る10品だけ原価を出す」「看板メニューの原価率を一度計算してみる」といった小さなステップから始めてください。 迷っているなら、「まずは紙とペンを出して、今月よく売れたメニューTOP5と、そのざっくり原価を書き出す」のがおすすめです。

よくある質問

Q1. 原価率は何%を目標にすべき?

A1. 業態にもよりますが、全体の目安としては30%前後が多いです。家賃・人件費とのバランス次第で、25〜35%の範囲で調整するのが現実的です。

Q2. 原価率が高くてもいいメニューは?

A2. 看板メニューや、口コミで話題になりやすい一皿は、高めの原価率(35〜40%)でもアリです。その分、他のメニューでバランスを取ります。

Q3. 原価率を下げると、味が落ちませんか?

A3. 単純に食材を安くするとリスクがありますが、仕入れ先の見直し・ロス削減・メニュー構成の整理で原価率を下げる方法もあります。

Q4. テイクアウトの原価率はどう考える?

A4. 食材原価に加えて、容器代や手数料も含めて35%以内を目安に設計すると、店内との差を吸収しやすくなります。

Q5. 原価率が低いのに利益が残らないのはなぜ?

A5. 家賃や人件費比率が高かったり、客数・客単価が目標に届いていない可能性があります。原価率だけでなく、他の数字も合わせて確認する必要があります。

Q6. 値上げと内容変更、どちらを優先すべき?

A6. まずは「内容を整える」ことを優先し、そのうえでどうしても合わない場合に値上げするほうが、お客さまに納得してもらいやすいです。

Q7. 原価計算が面倒で続きません…

A7. すべてを完璧にやる必要はありません。まずは「よく出る10品」だけ原価を出し、そこから徐々に広げていくのがおすすめです。

Q8. 原価率と客単価、どちらを優先?

A8. 店の状況によりますが、長期的には「客単価」を上げるほうが安定しやすいです。原価率はそのための”調整用のダイヤル”と考えるとバランスが取りやすくなります。

まとめ

飲食店の原価率は、「30%前後」を一つの目安にしつつ、家賃・人件費・客単価とのバランスで自店の基準を決めることが重要です。

全メニューを同じ原価率に揃えるのではなく、「看板メニューは高原価」「利益を支えるメニューは低原価」で、全体として目標原価率に着地させる設計が現実的です。

原価率だけを下げようとするのではなく、「ロス削減」「メニュー整理」「価格と内容の見直し」で、”満足度を保ったまま利益を確保する形”を目指すと、長く続けやすくなります。

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