飲食店の人手不足は解決できる?採用と定着のポイント
「応募したくなる」「続けたくなる」店づくりで現場の空気を変える方法
【この記事のポイント】
飲食店の人手不足は、応募者の母数だけでなく「伝え方」と「迎え入れ方」の設計で大きく変わります。
本記事では、3日で辞めたスタッフの一言や、求人文を“店長の手紙”に変えた焼肉店の事例を交えながら、採用と定着の両面で現場の空気を変える具体策を紹介します。
今日のおさらい:要点3つ
- 人手不足は「母数が少ない」のではなく、「応募したくなる・続けたくなる条件や伝え方」になっていないケースがよくあります。
- 採用は「求人媒体+紹介+店頭+SNS」の4つを組み合わせ、ターゲットに合わせたメッセージで“ちゃんと伝える”ことが重要です。
- 定着は「最初の7日間」と「最初の3か月」の関わり方で大きく変わり、ここに投資した方が長期的には採用費より安くつきます。
この記事の結論
一言で言うと「人手不足は“採用より定着”にテコ入れした方が早い」です。
最も重要なのは、「誰に来てほしいか」を具体的に決め、その人にとってのメリットを求人と現場の両方で一貫して伝えることです。
失敗しないためには、「条件を曖昧にしたまま募集する」「初日から放置する」「辞めた理由を聞かない」の3つを続けないことです。
なぜ人手不足が続くのか?
原因は「人がいない」より「情報と現場のギャップ」
正直なところ、「今はどこも人が足りない」という言葉は本音です。ただ、同じエリアでも人が集まる店と集まらない店があるのも事実です。
現場でよく見てきたのは、こんなパターンです。
- 求人情報には「アットホームな職場」と書いてある
- 面接では「忙しいけど楽しいよ」とだけ伝える
- 実際は、ピークタイムに教えてもらう余裕がない
応募者からすると、「聞いていた話と違う」と感じるギャップです。よくあるのが、
- 「最初の1週間はついて教えます」と言っていたのに実現していない
- シフト希望が通りづらいのに、事前に説明されていない
といったズレです。
このギャップが大きいほど、1か月以内の早期離職が増え、「人が来ない」のではなく「来ても続かない」状態になります。
【実体験1】オープンキッチンのカフェで、3日で辞めたスタッフの一言
以前、オープンキッチンのカフェで、アルバイトが3日で辞めたことがありました。忙しいランチタイムのあと、店長がそのスタッフに「どうして辞めるの?」と聞いたときの答えが印象的でした。
「仕事自体は嫌じゃないんですけど、何をやっていいのか分からない時間が長くて…。怒られているわけじゃないけど、“ここにいていいのかな”って不安になるんです」
正直なところ、店長も先輩スタッフも悪気はありませんでした。ただ、
- 誰が教えるか決まっていない
- 「困ったらこの人に聞いて」と言えていない
- 初日のゴールが共有されていない
という状態でした。
人手不足だと、「とりあえず来てくれただけでありがたい」と感じがちです。でも、新人側からすると、「自分の居場所」が見えないとあっという間に心が折れてしまう。
人手不足は「応募数×定着率」の掛け算で見る
人手不足を数字で考えると、
- 応募数(入口)
- 採用率(面接〜採用)
- 定着率(3か月・半年・1年)
の掛け算になります。
よくあるのが、
- 応募数を増やすために求人費を増やす
- でも定着率が低いので、常に募集し続ける
という「漏れたバケツに水を注ぎ続ける」状態です。
正直なところ、採用単価を上げるより、定着率を上げる方が長期的には効きます。
人が「応募したくなる」採用のポイント
ポイント1:「誰に来てほしいか」を最初に決める
求人の段階でいちばん多い失敗は、「誰に来てほしいか」が決まっていないことです。
- 学生か、フリーターか、主婦・主夫か
- 平日昼か、夜か、土日か
- 長期か、短期か
これが曖昧なまま求人を出すと、
- 忙しい時間に入れない人ばかり集まる
- 覚えた頃に辞めてしまう短期が多い
といったズレが起きます。
例えば、「平日ランチの11〜15時がとにかく手薄」という店なら、
- 近隣の主婦・主夫層
- フリーランスや在宅ワーカーの副業
- 平日昼に働きたいシニア層
などを想定して求人の文言を変える必要があります。
ポイント2:「条件」ではなく「物語」で伝える求人
よくある求人は、
- 時給
- 勤務時間
- 交通費
- 仕事内容
の箇条書きで終わってしまいます。これだと、他店との差が出ません。
応募したくなる求人には、「物語」があります。
- この店で働くと、どんな1日になるのか
- どんな常連さんがいて、どんな空気感なのか
- 半年後、一年後の自分はどう変わっているのか
例えば、
「ランチは近所の会社員さんで満席。顔を覚えて“いつものランチですよね”と言えるようになると、仕事が少し楽しくなります」
といった一文があるだけで、「この店で働いたら、自分は何をしているのか」が想像しやすくなります。
正直なところ、条件は似たような店が多いです。差がつくのは、「ここで働く意味」が書いてあるかどうかです。
【実体験2】求人文を「店長の手紙」に変えた焼肉店
ある焼肉店で、人手不足が続いていました。求人サイトの原稿はごく一般的で、
- 時給1,100円〜
- まかない付き
- シフト制
といった内容でした。
店長は「うちは普通の焼肉屋だから、特別なことなんて書けない」と言っていましたが、話を聞いてみると、
「オープンからいるスタッフが、うちで働いたことを履歴書に書いて就職活動を頑張っていて、“ここで学んだことが役に立った”と言ってくれた」
というエピソードが出てきました。
そこで、求人文の冒頭を「店長からの手紙」のような文章に変えました。
「うちはチェーン店ではありません。マニュアルも完璧ではないし、忙しい日はバタバタします。それでも、“ここで働いてよかった”と言って卒業していくスタッフが何人もいます。」
最初は「こんなこと書いて応募が来るのかな」と店長も不安そうでしたが、実は、そこに共感した学生からの応募が増えました。面接で応募者に理由を聞くと、
「正直なことを書いてくれている感じがして、ここなら頑張れそうだと思いました」
という声が多かったのが印象的でした。
人が「続けたくなる」定着のポイント
ポイント1:「最初の7日間」を“教える側の仕事”にする
人が辞めやすいタイミングは、最初の1週間と最初の1か月です。
この時期に必要なのは、「戦力」としての期待ではなく、「仲間として迎える」時間です。
- 初日は「今日のゴール」を1つだけに絞る
- 例:オーダーを取る前に、“水とおしぼりを出す”だけ完璧に覚える
- 「教える役」を1人に決める
- 誰に聞けばいいか分かるだけで、不安が減る
- 終わり際に5分だけ「今日できたこと」を一緒に確認する
正直なところ、忙しい現場ほど「教えるのは全員で」となりがちですが、その分だけ新人の頭の中は混乱します。
ポイント2:「マニュアル」ではなく「チェックリスト」
マニュアルは分厚いほど読まれません。現場で使えるのは、
- 開店前チェックリスト
- ランチタイムの流れ
- 閉店作業の手順
といった“チェック形式”のリストです。
- やったかどうかを自分で確認できる
- 抜け漏れを防げる
- 教える側も「何から教えるか」を共有しやすい
といったメリットがあります。
実は、「マニュアルを作ったのに、誰も見ていない」という店は多いです。逆に、A4一枚のチェックリストの方が、現場では圧倒的に使われます。
ポイント3:「感謝」と「成長」を言葉にして伝える
人が続けたくなる理由は、給料や条件だけではありません。
- 自分の仕事が役に立っていると感じられる
- 前よりできることが増えたと実感できる
- 誰かに名前で呼ばれ、存在を認められている
こうした“小さな実感”が、しんどい日でも踏ん張る力になります。
【現場の声】
アルバイト「“今日、最後までホール回してくれて助かったよ”って言われた日、帰り道ちょっとうれしくて」
正直なところ、忙しいとつい「できていないこと」に目が行きます。でも、「できたこと」を一つでも声に出すだけで、空気は変わります。
よくある質問
Q1:時給を上げないと人は集まりませんか?
A1:時給は重要ですが、仕事内容やシフトの柔軟さ、雰囲気など“総合点”で決まります。同エリアの相場から大きく下回っていなければ、まずは求人内容と定着策の見直しが先です。
Q2:求人媒体はどれが一番良いですか?
A2:業態やエリアによります。学生が多いエリアならアプリ系、主婦層なら地域情報誌や店頭張り紙も効きます。複数の入口を持つのが安全です。
Q3:社員とアルバイト、どちらを増やすべきですか?
A3:業態によりますが、ピークタイムのオペレーションを回す“核”として社員を配置し、その周りをアルバイトで支える形が一般的です。
Q4:研修に時間をかける余裕がありません。
A4:最初の7日間だけでも、「教える時間」をあえて確保すると、その後のミスや離職が減り、長期的には負担軽減につながります。
Q5:厳しくしないと現場が回らないのでは?
A5:厳しさと理不尽さは別物です。「何のためのルールか」を説明し、できたときはきちんと評価することで、緊張感と安心感のバランスが取れます。
Q6:辞めてしまった人に理由を聞くのは気まずいです。
A6:気まずさはありますが、辞めた理由を聞くことで初めて“本当の課題”が見えます。メールやアンケート形式でも構いません。
Q7:シフトが埋まらないとき、どうすれば?
A7:シフトの組み方を見直し、「必ず社員がいる時間帯」「ピークに合わせた人数」といった“型”を作ることで、無理なお願いが減り、信頼も保ちやすくなります。
Q8:常連との関係が濃く、新人が馴染みにくいです。
A8:常連のお客様に「新しく入った○○です」と紹介する一言を習慣化すると、新人が「見られている」感覚から「受け入れられている」感覚に変わりやすいです。
Q9:外国人スタッフの採用はハードルが高いですか?
A9:言語やビザなどのハードルはありますが、明確なルールとサポート体制を整えれば、戦力として長く活躍してくれるケースも多いです。
Q10:人手不足のときに、営業時間やメニューを減らすのは“負け”でしょうか?
A10:いいえ。人手が足りないのに無理を続ける方が、サービス低下と離職につながります。一時的に絞る決断は、長期戦のための戦略とも言えます。
まとめ
飲食店の人手不足は、「応募数」と「定着率」の掛け算で考えると整理しやすく、どちらか一方だけを見ても解決しません。
採用では「誰に来てほしいか」を明確にし、その人に刺さる物語と条件を求人で伝えることが重要で、定着では「最初の7日間」と「感謝と成長のフィードバック」を意識すると離職が減ります。
正直なところ、人手不足は一夜で解消する問題ではありませんが、「求人の書き方」「教える人の決め方」「辞めた理由の聞き方」といった小さな改善を積み上げることで、半年〜1年後の現場の空気は確実に変わります。
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