飲食店の営業時間はどう決める?売上を最大化する考え方
立地・客層から逆算する稼げる時間と削るべき時間の見極め方
【この記事のポイント】
営業時間は「長さ」ではなく「時間帯ごとの採算」で決めると、同じ売上でも利益が残りやすくなる。
正直なところ、1日のうち3〜4時間しか”本当に利益が出ている時間”はなく、残りの時間は固定費だけが流れている店も多い。
ケースによりますが、「売上が低い時間を1〜2時間削る」か「アイドルタイムに役割を与える」だけでも、月の手残りは目に見えて変わる。
今日のおさらい:要点3つ
- 「長く開ける=売上が増える」ではなく、開ける時間が長いほど人件費と光熱費が積み上がる
- お客さんは「理由が分からない変化」に不安を感じるだけで、「理由が分かる変化」には柔軟に対応してくれる
- 営業時間は一度決めたら終わりではなく、立地の変化や客層の動きに合わせて何度か調整していくもの
この記事の結論
一言で言うと、飲食店の営業時間は「売上が立つ時間」ではなく「粗利から人件費と光熱費を引いてプラスになる時間」だけを軸に決めるべきです。
最も重要なのは、「時間帯別の売上と客数・粗利」をざっくりでも把握し、赤字の時間を減らしつつ”稼げる時間”を厚くすること。
失敗しないためには、「とりあえず長く開けておこう」「世間の営業時間に合わせよう」といった”惰性の営業時間”をやめて、自店の客層と立地から逆算して決めることです。
営業時間をなんとなく決めてしまい、モヤモヤが積み上がる理由
静かな時間帯に、ついレジを何度も見てしまう午後
ランチのピークが終わった14時過ぎ。 店内は一気に静かになって、スタッフ同士の会話も少しゆるむ。 レジの横を通るたびに、つい今日の売上の数字に目が行ってしまう。 「この時間も家賃と人件費は流れてるんだよな」と頭の片隅で考えながら、なんとなくInstagramを開いてしまう。
夜の営業が終わって、片付けがひと段落したあと。 椅子に腰かけて、ふうっと息を吐きながら、またレジを半分クセのように覗き込む。 「今日は長く働いた割に、数字はそこまででもないな」というあの感じ。
こういう日が週に何度か続くと、「本当にこの営業時間でいいんだろうか」と頭のどこかで引っかかり始めます。 ただ、営業時間をいじるのって、正直こわいですよね。 「短くしたら売上が減るんじゃないか」「常連さんが離れるんじゃないか」と考えると、一歩が出にくくなります。
私自身、知り合いの店長からこんな本音を聞いたことがあります。
店長「正直なところ、15〜17時はほぼ何も起きない時間なんですよ」 私「じゃあいっそ休みにするのは?」 店長「実は、それ何度も考えたんです。でも、閉める勇気が出なくて」
営業時間を変える話は、いつもこの”葛藤”から始まります。
現場事例①「23時閉店」をやめて、利益が増えた居酒屋
駅から少し離れた住宅街の居酒屋の話です。 オープン当初は「17〜23時営業」。 ラストオーダーは22時半。 一見すると、よくある営業時間です。
ただ、数字を追ってみると、
- 19〜21時の2時間で売上の6〜7割
- 21〜22時で2割
- 22〜23時は、日に1〜2組いるかどうか
という状態でした。
オーナーに感想を聞いてみると、
オーナー「23時までやる意味あるのかなぁとは思ってたんですよね」 私「ですよね…」 オーナー「でも、たまに22時過ぎに来てくれる常連さんもいるから、そこを切っていいのか迷ってて」
この”たまに来てくれる人の顔”がよぎって、踏ん切りがつかないケースは本当に多いです。
そこで、1ヶ月だけ「22時閉店」にしてみるテストを提案しました。 22時半ラストオーダー→21時半ラストオーダーに変更し、その代わり「21時以降は軽めのおつまみセット」を作るなど、早めの時間の客単価アップを意識。
結果、
- 閉店時間を1時間短くした分、人件費と光熱費が月数万円削減
- 22時以降に来ていたお客さんの一部は、21時までにシフト
- それでも来られない常連さんには、「予約いただければ対応します」と柔らかく説明
トータルで見ると、売上は少し下がりましたが、利益はむしろ増えました。 「深夜のダラダラ営業がなくなって、体力的にも楽になった」と、オーナーの表情も軽くなったのが印象的でした。
「長く開ける=売上が増える」とは限らない
営業時間を長くすれば、その分チャンスは増える。 これは半分は事実ですが、もう半分は逆もあり得ます。
- 長く開けるほど、人件費と光熱費が積み上がる
- スタッフの疲れが抜けず、ピークのサービス品質が落ちる
- オーナー自身のコンディションも削られていく
結果的に、「働いている時間の割に、利益が残らない店」に陥ってしまう。
正直なところ、これもよくあるのが、「世間の営業時間に合わせているだけ」というパターンです。 周りが11時〜23時だから、自分もなんとなくその枠に収めている。 でも、本当にお客さんが来てほしい時間帯は、そのうち3〜5時間だけだったりします。
営業時間を考えるときに大事なのは、「売上の総量」ではなく、「時間帯ごとの採算」です。 1時間あたりの売上と粗利をざっくりイメージできるようになると、「この時間は開けておく意味がある」「ここは潔く閉めたほうがいい」という判断がしやすくなります。
営業時間を決めるうえでの基本の考え方
「立地」と「客層」からピーク候補を絞る
最適な営業時間を決めるうえでのスタートは、「立地」と「客層」の棚卸しです。
オフィス街
- ランチ需要が強い
- 平日の夜は早めの時間帯が中心
住宅街
- 夜の家族利用が多い
- 土日の昼〜夜が勝負
繁華街・駅前
- 夜間〜深夜の利用もあり
- 平日と週末で山が違う
実は、立地だけで「売れる可能性が高い時間帯」はかなり絞れます。
私がお手伝いしたオフィス街のカフェでは、もともと「7〜21時」という幅広い営業時間でした。 でも、実際の売上データをざっくり見ると、
- 7〜9時:ほぼゼロ
- 11〜14時:売上の6〜7割
- 17〜19時:テイクアウト中心に少し動く
- 19〜21時:ほぼゼロ
という状態でした。
そこで、思い切って
- 平日:10〜20時(ランチ+夕方テイクアウト)
- 土曜:11〜17時
- 日曜:定休
に変更。 結果として、売上は少し下がりましたが、利益は増え、スタッフのシフトも組みやすくなりました。
「営業時間を短くする=負け」ではありません。 立地と客層に合わせて、「戦う時間」を絞るイメージです。
実体験②「朝営業」を一度やめて、また復活させたカフェ
別のカフェでは、一度「朝営業で企業の社員を取り込もう」と考えて、7時オープンにチャレンジしました。 最初の1ヶ月は、常連さんや近所の人が物珍しさで来てくれましたが、その後は徐々に落ち着いてしまい、7〜9時の売上は日によってほぼゼロの日も。
店長は、こんな心の動きだったと話してくれました。
店長「最初は”朝からやれば売上増えるはず”って信じてたんですよ」 店長「でも、眠い目をこすりながら店を開けて、誰も来ない時間が続くと、さすがに心が折れそうになって」
そこで、一度朝営業をやめ、「10時オープン」に戻しました。 しばらくして、近隣に大きなオフィスビルが新しく建ち、人の流れが変わりました。 そのタイミングで、今度は「8〜9時の1時間だけ」モーニングセットを限定数で再開。
前回のような長時間営業ではなく、「短時間・限定数・メニューも絞る」形にしたことで、スタッフにも負担が少なく、リピートしてくれるお客さんもつきました。 ここで感じたのは、「営業時間は一度決めたら終わりではなく、立地の変化に合わせて何度か調整していくもの」ということです。
「時間帯別の採算」をざっくりでもいいから見る
営業時間を設計するうえで、最低限押さえておきたい数字があります。
- 時間帯別の売上(例:11〜14時、14〜17時、17〜20時、20〜23時)
- 客数と単価のざっくりイメージ
- スタッフの人数と人件費の感覚
これを”正確なレポート”にする必要はありません。 最初は紙にメモするだけでも構いません。
例えば、1日をざっくり4つに分けて、
- 朝
- ランチ
- アイドルタイム
- 夜
それぞれの売上と、おおよその人件費・光熱費をイメージしてみます。 すると、「この時間帯は売上◯円に対してコスト◯円だから、ほぼトントン」「ここは確実にマイナス」といった感覚が出てきます。
営業時間を決めるときは、この”体感”を数字に少しだけ近づけてあげるイメージです。 正直なところ、ここをやらずに「なんとなく」で決めてしまうと、モヤモヤが消えません。
営業時間を改善するときの具体的ステップ
まず「削る候補の時間」を1〜2時間だけ決める
いきなり大きく変えようとすると怖いので、最初は「どの1時間を削るとラクになりそうか」を考えるところからです。
- ほとんどお客さんが来ない
- スタッフの負担が大きい
- 仕込みや片付けと重なってバタつきやすい
こうした”なんとなくイヤな時間”は、だいたい削る候補になります。
よくあるのが、
- ランチ後の15〜17時をクローズにして、仕込みと休憩に充てる
- 平日の22時〜23時をクローズにして、早じまいにする
などの調整です。
「削る」ことに抵抗がある場合は、まず1ヶ月だけ”テスト期間”として試すのも手です。 お客さんにも、「今月だけこの時間をこう変えます」と説明し、反応を見ながら判断していくと、心理的なハードルが下がります。
「削る」代わりに「役割を変える」選択肢もある
営業時間を短くする以外に、「開けているけれど、役割を変える」というやり方もあります。
例えば、
- 14〜17時はイートインを止めて、テイクアウト・仕込み・SNS発信の時間にする
- 夜遅い時間は、予約のある日だけ開ける
- 雨の日や連休明けなど”動きが鈍いと分かっている日”は、早じまいしやすいルールにする
実は、「全部通常営業」で走り続けるより、「時間帯ごとにモードを切り替える」店のほうが、スタッフの疲れ方も緩やかで、アイデアも出やすくなります。
私が見てきた中でも、「平日の夜は予約がなければ20時で閉める」「雨の日はテイクアウトモードに切り替える」など、柔らかく営業時間を運用している店は、長く続きやすい印象があります。
「変えて大丈夫か」の不安にどう折り合いをつけるか
営業時間を変えるときにいちばん強いのが、「常連さんが離れないか」という不安です。
ここで役に立つのが、
- 事前に常連さんに一言相談してみる
- 「どうしてもこの時間じゃないと来られない方には、予約で柔軟に対応します」と伝える
- 変更の理由を正直に話す(人件費や体力の話も含めて)
というコミュニケーションです。
実は、お客さんは「理由が分からない変化」に不安を感じるだけで、「理由が分かる変化」には思ったより柔軟です。 「スタッフの負担が大きくて、品質を落としたくないので、営業時間を少し見直します」 と伝えると、「それなら仕方ないね」「無理しないで続けてよ」と返してくれる方も多いです。
こういう人は今すぐ営業時間を見直すべき
- 1日のうち、2〜3時間は「ほぼお客さんが来ない時間」があると感じている。
- スタッフや自分自身が、「最近ちょっと疲れが抜けない」と口にすることが増えた。
- 「営業時間を変えたほうがいいかも」と思いながら、半年以上なんとなく現状維持を続けている。
この状態ならまだ間に合います。 いきなり大幅な変更ではなく、まずは1〜2時間だけ”削る候補”や”役割を変える時間”を決めて、1ヶ月だけテストしてみてください。 迷っているなら、「今の営業時間を紙に書き出し、今日1日の中で”いちばん静かだった2時間”に丸をつける」ところから始めるのがおすすめです。
よくある質問
Q1. 営業時間を短くすると、売上は必ず減りますか?
A1. 一時的に下がる可能性はありますが、稼げない時間を削ることで利益が増えるケースも多いです。重要なのは売上ではなく手残りです。
Q2. どれくらいの期間、営業時間をテストすべき?
A2. 1ヶ月〜3ヶ月が目安です。短すぎると傾向が見えず、長すぎると戻しづらくなります。
Q3. 平日と土日で営業時間を変えるのはアリ?
A3. 大いにアリです。客層や動きが違うなら、「平日型」と「週末型」で時間帯を分けたほうが効率的です。
Q4. 早朝営業と深夜営業、どちらが負担が少ない?
A4. 店の立地とスタッフ次第ですが、多くの現場では「生活リズムを崩しにくい早朝」のほうが継続しやすい傾向があります。
Q5. ランチとディナーの間を完全に閉めても良い?
A5. もちろん可能です。その時間を仕込み・休憩・SNS発信に充てることで、結果的にランチとディナーの質が上がるケースもあります。
Q6. 営業時間を変えるときの告知はいつから?
A6. 理想は1ヶ月前。難しくても2週間前には店頭・SNS・Googleマップなどで告知しておくと、お客さんも予定を組みやすくなります。
Q7. 1人営業の店にはどんな営業時間が向いている?
A7. 自分の体力と生活リズムを守れる範囲で、「ランチ集中型」か「ディナー集中型」に振り切ったほうが続けやすいです。
Q8. 祝日や大型連休中の営業時間はどうすべき?
A8. 通常と同じにせず、過去の傾向を見て「動きが鈍い日は思い切って短縮」「逆に需要がある日は延長」と柔軟に変えると効率が上がります。
まとめ
営業時間は「長く開けること」ではなく、「利益が出る時間に集中すること」で決めたほうが、売上と体力の両方を守りやすくなります。
立地と客層から”稼ぎやすい時間帯”を見極め、時間帯別の売上と感覚的な採算をざっくり見える化することで、「削る時間」と「厚くする時間」が見えてきます。
いきなり大改革ではなく、「1〜2時間のテスト」「役割を変える時間帯の設定」「常連さんへの丁寧な説明」から始めると、リスクを抑えつつ最適な営業時間を探れます。
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