飲食店の売上目標はどう立てる?現実的な数値設定の方法

席数・回転数・客単価で分解する具体的な目標設計の手順

【この記事のポイント】

売上目標は「去年より少し上」ではなく、「席数×回転数×客単価×営業日」でロジックから組み立てるとブレにくくなる。

正直なところ、「目標売上はあるけれど、1日・1時間あたりに落とし込めていない」店がほとんどで、これが”ただ苦しいだけの数字”になる原因。

ケースによりますが、「月の利益目標→必要売上→日別・時間帯別の目標」の順で決めると、スタッフとも共有しやすく、達成率も上がりやすい。

今日のおさらい:要点3つ

  • 目標が「夢」のままだと現場の動きに落ちず、「分解」して初めて行動に変わる
  • 席数や人手に限界がある店ほど、客数より客単価を上げるほうが現実的に効く
  • スタッフへの共有は「月いくら」ではなく「今日のランチであと1組」のレベルまで落とすと前向きに動ける

この記事の結論

一言で言うと、飲食店の売上目標は「利益から逆算して決める数字」であり、席数・回転数・客単価・営業日数の4つに分解して設計するのが現実的です。

最も重要なのは、「月にいくら残したいか」→「そのために必要な売上はいくらか」→「それを1日・1時間あたりにするといくらか」という順番で組み立てること。

失敗しないためには、「去年の実績+気合い」で決めるのをやめて、客数と単価のどちらをどれくらい伸ばすのかを具体的に決めることです。

売上目標が”プレッシャーだけの数字”になってしまう理由

月末にレジを見ながら、なんとなく電卓を叩く夜

月末の営業後。 レジ締めをして、今日の売上を確認する。 頭の中で「今月の目標は300万円」とぼんやり思い出しながら、電卓アプリで「今いくらまで来ているか」を計算する。 表示された数字を見て、「あと◯日でこの差か…」と心の中でため息が漏れる。 そのままスマホを閉じて、「来月こそは」と自分に言い聞かせる。

多くのオーナーさんが、この「なんとなく計算」を毎月繰り返しています。 正直なところ、売上目標を立てるときに、

  • なぜその数字なのか
  • どの時間帯で、どれくらい取るつもりなのか
  • 客数と客単価、どちらをどれだけ伸ばしたいのか

まで落とし込めていないケースがほとんどです。

私が相談を受けたオーナーも、最初はこう話していました。

オーナー「一応、月300万は行きたいと思ってるんですけどね」 私「300万って、どういう根拠なんです?」 オーナー「うーん…なんとなく、そのくらいあればやっていけそうで」

この「なんとなく」のままだと、目標は”夢”のままで、現場の動きに落ちてきません。

現場事例① 「目標だけ高くて、動き方が変わらなかった店」

以前、駅近のカウンター中心の居酒屋で、売上目標の立て方を一緒に見直したことがあります。 それまでは、「去年が月250万円くらいだから、今年は300万円を目標にしよう」とシンプルに決めていました。

でも、月が終わるたびに、

オーナー「惜しかったな〜、今月280万。来月こそは」

という会話を繰り返すだけで、具体的な”次の一手”が出てきませんでした。

そこで、一緒に数字を分解してみました。

  • 席数:カウンター10席+テーブル8席=合計18席
  • 営業日数:25日
  • 客単価:平均3,000円

目標300万円をこの数字で割ると、

300万円 ÷ 25日 = 1日12万円 12万円 ÷ 3,000円 = 1日40人

つまり、「1日40人来てくれれば、目標達成ライン」ということが見えてきました。

そこからさらに、時間帯別に分けました。

  • 17〜19時:15人
  • 19〜21時:20人
  • 21〜23時:5人

こう整理したとき、オーナーがぽつりと漏らしました。

オーナー「19〜21時はだいたい埋まるんですけど、17時台と21時以降はガラガラなんですよね」

つまり、「売上目標300万円」の課題は、「17時台と21時以降の客数をどう増やすか」というテーマにまで絞り込めたわけです。 ここからようやく、「早い時間のハッピーアワー」や「21時以降限定メニュー」といった施策の話ができるようになりました。

「目標はあるのに、現場が動けない」のは分解が足りないから

売上目標が”絵に描いた餅”になる一番の理由は、「分解が足りない」ことです。

  • 月の目標
  • 週の目標
  • 1日の目標
  • 1時間あたりの目標(または回転数)

ここまで落とし込んで初めて、

  • 今日はランチであと何組ほしいか
  • ディナーの2回転目を作る必要があるか
  • 客単価をあと何百円上げたいか

が具体的な行動に変わっていきます。

逆に、月の数字だけ見ていると、「今月も頑張ろう」「あと少し届かなかった」で終わりやすい。 正直なところ、それではスタッフにも共有しづらく、「目標って上の人が見るもの」という空気になってしまいます。

達成しやすい売上目標を立てる4つのステップ

ステップ① 「月にいくら残したいか」から決める

売上目標は、まず”残したい金額”から考えます。

  • 毎月の固定費(家賃・光熱費・人件費・通信費など)
  • 借入の返済
  • 自分の生活費・将来の投資に回したい額

これらをざっくり足して、「月に最低いくら必要か」「理想はいくら残したいか」を決めます。

たとえば、

  • 固定費合計:200万円
  • 借入返済:20万円
  • オーナーとして残したい金額:30万円

→ 最低でも250万円、理想は300万円以上の売上が必要、というイメージになります。

この時点で、「なんとなく300万円」ではなく、「300万円の根拠」が生まれます。 正直なところ、ここを曖昧にしたまま走ると、「忙しいのに、結局何も残らない」という状態になりがちです。

ステップ② 席数と客単価から「必要客数」を出す

次に、「その売上を上げるには、どれくらいの客数が必要か」を見ます。

例として、目標売上300万円の場合、

  • 営業日数:25日
  • 客単価:3,000円

とすると、

300万円 ÷ 25日 = 1日12万円 1日12万円 ÷ 3,000円 = 40人/日

となります。

この「1日40人」をさらに時間帯に分けます。

  • ランチ:20人(1人1,000円)→ 2万円
  • ディナー:20人(1人5,000円)→ 10万円

など、自店のスタイルに合わせて組み立てます。

“数字遊び”ではなく、「現実にあり得る客数」に収まっているかがポイントです。 席数18席の店が、「1日100人」の目標を立てたら、2回転どころか3回転以上が必要になります。 そのオペレーションが現実的かどうかも、ここで一緒に考える必要があります。

ステップ③ 営業時間ごとに「何席×何回転か」を決める

売上目標が客数に落ちたら、次は「席数×回転数」で考えます。

  • 席数:18席
  • ディナーのピーク:18〜21時(3時間)
  • 1テーブルの平均滞在時間:1.5時間

この場合、ピークタイムに目指せる回転は「最大で2回転」です。

もしディナーで20人を目標にするなら、

  • 18〜19:30:1回転目で12〜14人
  • 19:30〜21:2回転目で6〜8人

といったイメージに分解できます。 ここまで見えると、「18時台の予約を増やしたい」「2回転目の予約を取りたい」といった具体的な行動につながります。

逆に、「回転数を無視した目標」は、現場にとってプレッシャーだけになりがちです。 実は、売上目標は「席数と回転数で物理的に到達できる範囲か」をチェックするフィルターでもあります。

よくある失敗と、その回避策

よくある失敗① 「去年+10%」だけで決めてしまう

もっとも多いのが、「去年の売上に10%上乗せして目標にする」というやり方です。 一見分かりやすいのですが、

  • 去年の数字自体が”体力を削って達成したもの”かもしれない
  • 家賃や人件費の変動を加味していない
  • 客数と単価、どちらをどれだけ上げるつもりなのかが不明瞭

という課題があります。

数字に”過去のがんばり”が含まれている場合、それをベースに上積みしていくのは、かなり苦しい戦いになりがちです。 まずは「去年、本当に続けられるペースだったか」「どの月がしんどかったか」を振り返り、必要なら去年の数字を一度”ならす”ことも選択肢に入れておきたいところです。

よくある失敗② 「目標はあるが、スタッフに伝えない」

次に多いのが、「売上目標はオーナーだけが知っていて、スタッフにはぼんやりしか伝わっていない」パターンです。

スタッフ:「売上は上げたいんですよね?」 オーナー:「まぁね…」

これだと、現場の動きはほとんど変わりません。

理想は、「1日いくら」「ランチでいくら」「ディナーでいくら」というレベルまで落とし込んで、一緒に共有すること。 「今日のランチ、目標の8割まで来たから、あと1組だけ欲しいね」とか。 小さな会話が重なって、ようやく売上目標が”自分ごと”になっていきます。

よくある失敗③ 「客数だけを追いすぎて、客単価を見ていない」

売上は「客数×客単価」で決まります。 なのに、現場では「もっとお客さんに来てほしい」という話ばかりになりがちです。

  • 席数や回転数に限界がある店
  • スタッフ数的に、これ以上客数を増やしにくい店

こういう店は、客数より「客単価」を上げることに意識を向けたほうが現実的です。

  • セットメニューで+300円
  • ドリンクやデザートの提案で+200円
  • コースと飲み放題で+1,000円

1人あたり500円アップできれば、1日40人で2万円、月25日で50万円の差になります。 これだけで、「目標までのギャップ」の半分以上が埋まることも珍しくありません。

こういう人は今すぐ売上目標を見直すべき

  • 「毎月の目標」はあるのに、その根拠を説明しろと言われると詰まってしまう。
  • 月末になるたびに「足りない」「来月こそは」と同じことを繰り返している感覚がある。
  • スタッフに「売上を上げよう」とは言うものの、「具体的に何をどれくらい増やしたいか」を共有できていない。

この状態ならまだ間に合います。 いきなり完璧な計画を作る必要はありません。 まずは「月の利益目標→必要売上→1日あたりの売上→1時間あたりの目安」という1本の線だけでも紙に書き出してみてください。

迷っているなら、「今の目標売上を1日あたりに割り、その数字を”おおよそ客数×客単価”に置き換えてみる」ところから始めるのがおすすめです。

よくある質問

Q1. 売上目標は、月・週・日どの単位で設定すべき?

A1. 基本は月ですが、達成しやすくするには「月→週→日」の3段階に分けて、ブレを早めに修正できるようにするのがおすすめです。

Q2. どれくらいの伸び率を目標にするのが現実的?

A2. 状況にもよりますが、既存店なら前年比105〜115%程度が現実的なレンジです。大きく変える場合は、施策もセットで必要になります。

Q3. 売上目標と利益目標、どちらを優先すべき?

A3. 長期的には利益目標を優先すべきです。売上だけを追うと、人件費や原価が膨らみ、「忙しいのに残らない」状態になりがちです。

Q4. 客数と客単価、どちらを先に上げるべき?

A4. 席数に余裕があるなら客数、余裕がないなら客単価から手をつけたほうが現場の負担が少なく済みます。どちらか一方に寄せて考えるのがポイントです。

Q5. 売上目標が高すぎると感じるときはどうする?

A5. まずは「その目標に必要な客数・回転数」を出してみて、物理的に可能かどうかをチェックしてください。現場のキャパを明らかに超えているなら、数字の見直しも選択肢です。

Q6. 営業時間を変えるとき、売上目標も変えたほうがいい?

A6. はい。開けている時間が変われば取れる売上の天井も変わります。営業時間と席数を前提に、改めて日別・時間帯別の目標を組み直すのが安全です。

Q7. 新規オープンの場合、どうやって売上目標を立てる?

A7. 立地と周辺相場から「客数の仮説」を立て、席数・回転数・客単価を保守的に見積もって設定します。初年度は”検証用の数字”と割り切るのも大事です。

Q8. スタッフに売上目標を共有するとプレッシャーになりませんか?

A8. 共有の仕方次第です。「月300万」ではなく「今日のランチでいくら」「今のペースなら行けそうか」と、小さな数字に分けて話すと前向きに捉えてもらいやすくなります。

まとめ

飲食店の売上目標は、「去年+気合い」ではなく、「月の利益目標→必要売上→席数・回転数・客単価」で分解して決めると、現場で動かしやすくなります。

よくある失敗は、「分解しない」「スタッフと共有しない」「客数だけを追う」の3つで、ここを避けるだけでも目標の”現実味”が大きく変わります。

小さな店ほど、売上目標を”恐れる数字”ではなく、”日々の動きを決める目安”として使えるようになると、心の負担も軽くなっていきます。

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