飲食店の多店舗展開は可能?失敗しないための判断基準
1店舗目の再現性と任せられる店長づくりから始める出店戦略
【この記事のポイント】
多店舗展開の判断材料は「再現性のある利益」と「現場不在でも回る仕組み」が揃っているかどうか。
正直なところ、「2号店の出店タイミング」と「誰を店長にするか」で、その後5年分の楽さ・苦しさがかなり変わる。
ケースによりますが、「同一エリアでの2〜3店舗目」から始めると、人材・仕入れ・オペレーションのシナジーを出しやすい。
今日のおさらい:要点3つ
- 多店舗展開の成功確率の7〜8割は「1店舗目の状態」で決まっている
- 増やすほどラクになるのではなく、増やす前に「ラクに回る仕組み」を作る順番が逆転しがち
- 倒れるパターンの多くは「黒字倒産」に近く、勢いより”数字の守備”がものを言う
この記事の結論
一言で言うと、多店舗展開で失敗しないためには「1店舗目の利益の再現性」「任せられる店長」「標準化されたオペレーション」の3つが揃ってから増やすことが重要です。
最も重要なのは、「自分が丸1日いなくても1店舗目が黒字で回り続ける状態」を先につくること。
失敗しないためには、「出店できるか」ではなく「出店したあとも3年安定して回せるか」という視点で判断することです。
なぜ多店舗展開は甘く見られがちなのか
物件情報サイトを見ながら、つい「ここもいけそう」と考えてしまう夜
営業が終わったあと、スタッフが帰った静かな店内で、片付けの音だけが響く時間。 レジ締めをして今日の売上を確認し、「今月もなんとか目標には届きそうだな」とホッとする。 ふとスマホで物件情報サイトを開いて、「○○駅近く、元飲食店」の文字に目が止まる。 「ここ、今の店からも近いし、家賃も悪くないな」と指でスクロールしていくうちに、頭の中で新しい店のイメージが膨らんでいく。 同時に、「でも、今の店だけでも正直いっぱいいっぱいなんだよな…」という小さなため息が漏れる。
この「ワクワクと不安が半々」の感覚は、多店舗展開を考え始めたオーナーなら誰でも経験していると思います。 正直なところ、多店舗展開は”夢”として語られやすく、「2店舗目を出したら一気にラクになる」というイメージも根強いです。 実は、それが一番危険な考え方だったりします。
私も以前、とある焼肉店のオーナーからこんな話を聞きました。
オーナー「1店舗目がうまくいったとき、正直”今なら何やってもいける気がした”んですよ」 オーナー「実は、そこからが地獄の始まりでしたけどね」
2号店・3号店を出したことが”きっかけ”で、本業そのものが揺らいでしまう例も珍しくありません。
現場事例① 1号店好調→2号店同時オープンで倒れかけたケース
ある居酒屋オーナーの話です。 1号店は駅から徒歩5分、席数30席ほどの小さな店。開店から2年ほどで売上・利益とも安定してきました。 そのタイミングで、同じ沿線に良さそうな物件が2つ見つかり、「勢いのあるうちに」と2号店と3号店をほぼ同時に出しました。
最初の数ヶ月は、オーナーが自ら3店舗を走り回り、オープンキャンペーンも手伝って客入りも上々。 ところが半年ほどすると、スタッフの離職が増え、店長クラスの人材も疲弊し始めます。
オーナー「正直なところ、朝から晩まで現場に立ち続けて、数字の管理どころじゃなかったです」 オーナー「頭では分かってたんですけど、”店長が育ってから出店”じゃなくて、”店長を育てながら出店”になってしまって」
結果的に、3号店は1年足らずでクローズ。 残った2店舗も、しばらくの間は借入返済と穴埋めに追われる状況が続きました。
このオーナーが後から言っていたのは、「勝負するなら2号店だけにしておくべきだった」という一言でした。 多店舗展開でよくある失敗は、”勢い”に任せて一気に増やしてしまうパターンです。
実は「1店舗目」の状態で結果はほぼ決まっている
多店舗展開は、華やかなイメージとは裏腹に、1店舗目の状態で成功確率の7〜8割が決まっています。
- オーナー不在でも黒字を維持できているか
- 原価・人件費・家賃のバランスが安定しているか
- 店長候補や中核スタッフが育っているか
- マニュアルやオペレーションが「人」ではなく「仕組み」で回っているか
これらが整っていれば、2店舗目以降で多少のトラブルがあっても立て直しが効きます。 逆に、1号店がオーナーのマンパワーでギリギリ回っているだけの場合、店を増やすほどオーナーの体と心が削られていきます。
正直なところ、「多店舗展開をするかどうか」は、”増やしたいかどうか”ではなく、”増やしても崩れない仕組みがあるかどうか”で決めたほうが、長期的には安全です。
多店舗展開を考える前に確認すべき「3つの条件」
条件① 「オーナー不在の日でも利益が出ているか」
一番シンプルで、一番現実的なチェックポイントです。 1店舗目について、「自分が丸1日現場に立たない日」を作ってみて、その日の売上とオペレーションを確認します。
- 売上・利益が普段と大きく変わらない
- 提供スピードや接客品質が極端に落ちない
- クレームが増えない
この状態であれば、「仕組み」や「人材」が機能している証拠です。 逆に、この状態を作れていないまま店舗数だけ増やすと、オーナーの不在分を他店舗で”体力と気合”で埋めることになりがちです。
私が関わったあるビストロでは、オーナーが「週に1日は完全に店から離れる」と決めたことで、むしろ店長の意識が変わっていきました。 最初はオーナーも半信半疑でしたが、半年ほど経った頃には、「いなくても回る」感覚が少しずつ増えてきたといいます。 実は、多店舗展開の準備は、「1店舗目から少しずつ自分のいない時間を増やすこと」から始まっています。
条件② 「数字の管理が”感覚”から”ルール”に変わっているか」
多店舗展開では、1店舗ごとの数字管理が緩いと、一気に資金繰りが苦しくなります。
- 原価率(食材+ドリンク)がだいたい何%か
- 人件費率が何%のラインを超えると危険か
- 家賃比率が売上の何%までなら許容か
こうした数字を”感覚”ではなく”ルール”として持てているかが大きな分かれ目です。
別の居酒屋チェーンでは、「原価30%以内・人件費30%以内・家賃10%以内」を基準に、 月ごとに各店の数値を管理していました。 このルールがあることで、「どの店舗がどの部分で苦戦しているか」を早く察知でき、テコ入れも早くできていました。
正直なところ、小さな個人店ではここまで細かく管理していないケースが多いです。 ですが、多店舗展開を目指すなら、最低限「売上・原価・人件費・家賃・利益」の5つを月次でチェックし、異常値に気づける状態にはしておきたいところです。
条件③ 「任せられる店長候補がいるか」
多店舗展開は、ビジネスの話であると同時に”人の話”です。 どれだけ良い立地・良いコンセプトでも、現場を任せられる人がいなければ、オーナーが2人分・3人分働くことになります。
- 自分がいないときに、自主的に動いているスタッフがいるか
- 売上や原価に興味を持って質問してくる人がいるか
- ミスを隠さず共有し、改善アイデアを出してくれるか
こうした「店長候補」の存在は、多店舗展開の成否を左右します。
あるオーナーは、2号店を出す前に「店長候補を3人作る」と決め、半年〜1年かけて教育しました。 結果として、2号店・3号店のオープン時には、それぞれの店に信頼できるリーダーを置くことができ、オーナーは”全店舗を見回る立場”にシフトできました。 実は、店舗数が増えるほど、「オーナーの頭が現場ではなく”全体”に向いているか」が重要になっていきます。
多店舗展開でよくある失敗と、その回避策
よくある失敗① 「1号店とまったく違うコンセプトに手を出す」
よくあるのが、1号店とは違う業態・コンセプトにいきなり挑戦してしまうパターンです。
- カジュアル居酒屋→本格フレンチ
- ラーメン店→カフェ
- バル→テイクアウト専門店
もちろん成功例もありますが、失敗例のほうが圧倒的に多い印象です。 理由はシンプルで、「1号店で培ったノウハウがそのまま使えない」からです。
- 仕入れの経験が活きにくい
- ターゲット客層が違い、マーケの打ち方も変わる
- スタッフ教育の内容もほぼ別物になる
結果として、「全部1からやり直し」になり、オーナーのキャパをオーバーしがちです。
段階としては、
- 同じコンセプト・業態で、近いエリアに2号店
- 同じコンセプトで、別エリアに3号店
- そこから業態を少し変えるチャレンジ
くらいの順番のほうが、リスクを抑えやすくなります。 正直なところ、「いきなり全然違うジャンルに挑戦」は、多店舗展開ではなく「新規事業」に近いので、覚悟と準備が必要です。
よくある失敗② 「資金繰りのシミュレーションが甘い」
出店時は、どうしても売上のポジティブな予想に引っ張られがちです。
- 「オープン直後はこのくらい行くはず」
- 「半年後にはこれくらいまで伸びていてほしい」
でも、実際には、
- 想定より売上が立ち上がるのに時間がかかる
- 思ったより人件費がかかる
- 設備トラブルなどで予想外の出費が出る
といった”誤差”が普通に起きます。
安全側に見るなら、
- 売上予測は「やや控えめ」
- 人件費・原価・予備費は「やや多め」
でシミュレーションしたほうが現実的です。 手元資金も、「出店費用+運転資金3〜6ヶ月分」を最低ラインとして考えたいところです。
実は、多店舗展開で倒れるパターンの多くは、「黒字倒産」に近いです。 売上はそこそこあるのに、手元の現金が回らなくなって詰んでしまう。 ここは、勢いだけでなく、”数字の守備”がものを言う部分です。
よくある失敗③ 「オーナーがずっと現場から抜けられない」
最後に、オーナー自身の働き方の問題です。 多店舗展開をしたのに、結局
- 日によってA店・B店・C店を全部回る
- 現場でシフトに入らないと回らない
- 経理や数字の管理が夜中〜早朝に回ってくる
という働き方になってしまうと、長く続きません。
多店舗展開をするなら、遅くとも2〜3店舗目の段階で「オーナーは現場の”穴埋め要員”ではない」働き方にシフトする必要があります。 現場に入ること自体は悪くありませんが、それが前提になっていると、病気や家庭の事情など”想定外”が起きたとき、一気に崩れます。
あるオーナーは、「週3日は現場、週2日は本部仕事」とあえてルールを決め、自分の時間も”役割分担”しました。 最初は「現場にもっといたほうが売上取れるかも」と迷いもあったそうですが、 後から振り返ると、「あのとき”本部の時間”を作ったから今がある」と話していました。
こういう人は今すぐ「増やす前の準備」を始めるべき
- 1号店が黒字ではあるものの、自分が休むと数字が一気に落ちる。
- 物件情報を見るたびに、ワクワクと同時に胃がキュッとなる感覚がある。
- 「いつか2号店を」と言い続けているが、具体的な条件や数字をまだ決めていない。
この状態ならまだ間に合います。 いきなり出店計画を立てるのではなく、まずは1店舗目で「オーナー不在の日を作る」「数字のルールを決める」「店長候補を一人育てる」といった準備から始めるのがおすすめです。 迷っているなら、「自分が1週間いなくても店が回る状態を作れるか」を、多店舗展開の”合格ライン”として一度イメージしてみてください。
よくある質問
Q1. 2号店を出すタイミングの目安は?
A1. 1号店の売上・利益が安定し、オーナー不在の日でも黒字を維持できる状態が最低ラインです。期間で言えば、開業から2〜3年後が一つの目安になりやすいです。
Q2. 何店舗くらいから”多店舗展開”と言えますか?
A2. 一般的には2店舗目からですが、「オーナー以外の店長がいる状態」で2〜3店舗を回せているかどうかが、本当の意味での多店舗展開のスタートラインです。
Q3. FC(フランチャイズ)と直営、どちらがいい?
A3. 利益率とコントロールのしやすさを優先するなら直営、リスク分散やスピードを重視するならFCも選択肢です。ただし、ブランド・オペレーションの標準化ができていることが前提です。
Q4. まずは何店舗までを目指すのが現実的?
A4. 人材や資金にもよりますが、最初のステップとしては「同一エリアで2〜3店舗」を安定させることを目標にするのが現実的です。
Q5. 多店舗展開するとき、エリアは分散すべき?
A5. 最初は同一エリアまたは近隣エリアに集中させたほうが、仕入れ・シフト調整・ブランド認知の点で効率的です。遠方への展開は、ある程度の規模になってからが安全です。
Q6. 2号店を失敗したらすべて終わりですか?
A6. 場合によりますが、1号店がしっかり利益を出していて、撤退の判断を早くできれば、やり直しは十分可能です。”撤退条件”を事前に決めておくことが大切です。
Q7. 法人化は何店舗目から考えるべき?
A7. 税務や社会保険の観点から、売上規模や利益が一定以上になったタイミングで検討するのが一般的です。店舗数だけでなく、総売上・利益・リスク分散の観点で判断するのがおすすめです。
Q8. 多店舗展開を目指すなら、最初からチェーンを前提にコンセプトを決めるべき?
A8. 「再現性」「標準化しやすさ」は意識しておいたほうが良いですが、最初から完璧を目指すより、1店舗目の成功パターンを見つけてから調整していくほうが現実的です。
まとめ
飲食店の多店舗展開は、夢や勢いではなく、「1店舗目の再現性」「任せられる人材」「数字の管理力」が揃っているかどうかで決めるべきです。
よくある失敗は、「1号店と全く違う業態に手を出す」「資金繰りのシミュレーションが甘い」「オーナーが現場から抜けられない」の3つで、ここを避けるだけでも成功確率は大きく変わります。
小さく始めるなら、「同一エリアで2〜3店舗」「自分不在でも回る仕組み」「撤退条件を決めておく」の3点セットを意識すると、長期的に無理のない多店舗展開がしやすくなります。
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