飲食店のメニュー数は多い方がいい?絞り込みの判断基準

飲食店のメニュー数は多い方がいい?絞り込みのメリットと判断基準

【この記事のポイント】

メニューは多いほど売れる、は誤解です。品数の最適解は「50品」ではなく「原価とオペレーションが破綻しない範囲」で決まります。判断基準は3つ。回転率、廃棄率、そして注文の集中度です。まずこの数字を見てください。

目安として、注文全体の8割は上位2〜3割のメニューに集中します。つまり下位7割は、載せる価値の再検討対象。売れないメニューは在庫を眠らせ、仕込みを増やし、提供を遅らせます。数を誇るほど、利益は薄くなりがちです。

正直なところ、答えは「業態による」です。専門店は絞る、居酒屋はある程度広げる。ただ共通するのは、増やすなら理由、減らすなら根拠を数字で持つこと。この記事では、増減を感覚でなく判断できる軸を、現場の実例とともに整理します。

今日のおさらい:要点3つ

  • 注文の8割は上位2〜3割に集中する。下位メニューは「削る候補」として常に疑う
  • 絞り込みの効果はロス率・提供速度・食材の共通化に現れる。品数そのものより中身の質を見る
  • 減らす判断は「注文数・粗利・オペ負荷」の3点を月次で見て、感情でなく数字で決める

この記事の結論

一言で言うと、メニューは「多い方がいい」のではなく「必要な数に整える方がいい」。最も重要なのは、品数を増減させる前に、いま何がどれだけ売れているかを月単位で把握することです。数字を握れば、削る勇気も、あえて残す判断も、迷わず持てるようになります。

「品数が多い=親切」という思い込みが、店を疲れさせる

閉店後、動かなかった食材を静かにゴミ袋へ入れる夜

ラストオーダーが過ぎ、仕込んだはずの食材がほとんど手つかずで残っている。冷蔵庫を開けて、賞味の近い順に取り出しては、また戻す。「明日は出るかもしれない」と自分に言い聞かせて、結局は数日後に捨てる。メニュー表を眺めながら、この一皿は先月何食出たっけ、と思い出せない。そんな夜を繰り返している店は、決して少なくありません。

よくあるのが、お客様のために選択肢を増やしたつもりが、いつのまにか自分の首を締めているパターン。品数は足し算では増えても、引き算はなかなかできない。載せた手前、外すと寂しい。でも、その優しさのコストは、廃棄と仕込み時間という形で毎日発生しています。

実体験①:58品を32品に絞ったら、粗利が上がった

ある居酒屋業態の店で、グランドメニューが58品ありました。POSで1品ごとの月間注文数を出してみると、月に3食以下しか出ないメニューが19品。全体の3分の1です。ここを思い切って整理し、32品まで絞りました。結果、食材ロス率は約8%から5%台へ改善。仕込み時間も1日あたり40分ほど短縮できました。

面白いのは、売上が落ちなかったこと。むしろ客単価は微増しました。選択肢が減った分、お客様が「おすすめ」や写真の大きい看板料理に流れ、単価の高い一皿が出やすくなったからです。品数を減らして売上が下がる、という不安は、実際にはロスと迷いを減らすメリットに上回られることが多いのです。

多すぎるメニューが奪う、3つの見えないコスト

品数が多いと、まず食材の種類が増えます。在庫が分散し、それぞれが少しずつ余って傷む。次に仕込みと提供の負荷。オペレーションが複雑になり、ピーク時にミスと遅れが出る。最後にお客様の選択疲れ。人は選択肢が多すぎると決められず、結局いつもの一皿に戻るか、注文数そのものが減ります。数の多さは、思っている以上に静かに利益を削っています。しかも厄介なのは、この3つのコストが伝票にはっきり出てこないこと。だからこそ、意識してデータで可視化する必要があります。

絞り込みの判断軸:どの数字を、どう見るか

「ABC分析」で、メニューを3つのグループに分ける

やることはシンプルです。過去1〜3か月の注文数を多い順に並べ、上位からA・B・Cの3グループに分ける。Aは主力、Bは中堅、Cは低迷。Cグループのうち、粗利も低くオペ負荷が高いものが「削る第一候補」です。ただし例外はあります。数は出なくても客単価を押し上げる高単価メニューや、店の看板になる象徴的な一皿は、注文数だけで切ってはいけません。

中小企業庁の資料でも、小規模事業者の収益改善では「売れ筋と死に筋の把握」が繰り返し挙げられます。飲食も同じで、勘に頼らずデータで死に筋を見つけることが、絞り込みの出発点になります。

実体験②:削るより「共通化」でメニューを整えた店

別のカフェ業態では、単純に減らすのではなく、食材の共通化でメニューを整理しました。ソースやトッピングを見直し、5種類の食材で12品を回せる設計に組み替えたのです。品数は40品前後を維持したまま、在庫の種類は3割減。廃棄が減り、原価率は約34%から31%へ下がりました。数を減らさずに、中身をスリムにする道もあるわけです。

現場の声:ベテラン店長とオーナーの会話から

オーナー「常連さんが好きな裏メニュー、これ月2食だけど残したい」
店長「なら残しましょう。ただ提供に手間がかかる分、注文が入ったら他の仕込みを止めることになる。ピーク帯は”予約のみ”にしませんか」
オーナー「それならロスも出ないな」
——こうやって、削るか残すかの二択ではなく「出し方を変える」第三の選択肢が生まれます。ケースによりますが、全部を切る必要はないのです。

よくある失敗と、その防ぎ方

失敗①:人気メニューを「飽きたから」と自分の感覚で外す

作り手が飽きても、お客様は飽きていません。よく出る一皿を感覚で外すと、来店動機そのものを失います。外す判断は、必ず注文数の推移で。3か月連続で落ちているなら理由を探る、単月の変動なら様子を見る。感情ではなく、時系列の数字で決めることが防止策です。

失敗②:一気に半分に減らして、常連を戸惑わせる

絞り込みは正しくても、やり方が急だと反発を招きます。おすすめは段階的に。まずCグループの下位数品を「季節終了」の形で静かに落とし、反応を見る。一度に全部変えず、月ごとに小さく調整する方が、常連の離反を防げます。

判断基準:残すか削るかを決める3つの問い

迷ったら、この3問で整理します。
①その一皿は「注文数」か「粗利」か「集客力」のどれかで貢献しているか。
②削ったとき、代わりに注文される受け皿があるか。
③残すなら、ロスを出さない出し方(予約制・数量限定)にできるか。
3つとも「いいえ」なら、削る。1つでも「はい」なら、出し方を工夫して残す。この線引きがあれば、他店の品数と比べて焦る必要はありません。

こういう店は、今すぐメニューを見直すべき

もし「先月このメニューが何食出たか、すぐに答えられない」なら、まずはPOSやレジのデータを1か月分だけ出してみてください。それだけで、削るべきものと守るべきものが驚くほどはっきり見えます。仕込みに追われている、廃棄が減らない、提供が遅いと感じているなら、原因は品数の多さかもしれません。実は、忙しさの正体が「多すぎる選択肢」だったというケースは珍しくないのです。

いきなり大改革をする必要はありません。今月はCグループの下位3品だけ見直す。それだけでもロスは動きます。小さく始めて、数字の変化を確かめながら整えていく。その積み重ねが、疲れない店・利益が残る店をつくります。

よくある質問

Q1. メニュー数は結局いくつが正解ですか?

A1. 業態次第で正解は変わります。専門店なら10〜20品、居酒屋なら40〜60品が一つの目安ですが、数より「注文の8割を占める主力が明確か」の方が重要です。

Q2. 絞り込むと売上が下がりませんか?

A2. 下位メニューを整理する限り、売上はほぼ落ちません。実例では品数を約4割減らしても売上維持、客単価は微増でした。注文が主力へ集中するためです。

Q3. どのメニューを削るか、基準はありますか?

A3. 「注文数」「粗利」「オペ負荷」の3点で判断します。注文が少なく粗利も低く、手間だけ多いメニューが最優先の削除候補です。月次で見ましょう。

Q4. 数は出ないけれど残したいメニューがあります

A4. 客単価を上げる高単価品や看板料理なら残す価値があります。ロスが心配なら「予約制」「数量限定」に切り替え、廃棄を出さない出し方にしましょう。

Q5. 品数を減らさずにロスを減らせますか?

A5. できます。食材の共通化が有効です。実例では5種類の食材で12品を回す設計にし、在庫種類を3割減、原価率を約3ポイント下げられました。

Q6. 見直しはどのくらいの頻度でやるべきですか?

A6. 月1回のABC分析が目安です。季節メニューの入れ替え時に合わせると自然です。四半期に一度、大きな棚卸しをかけると精度が上がります。

Q7. 新メニューはどんどん追加していいですか?

A7. 追加するなら「1品足したら1品見直す」を原則に。総数を膨らませず入れ替える発想が、オペレーションと原価を守ります。足しっぱなしが一番危険です。

Q8. 小さな店ほど絞った方がいいですか?

A8. はい。人手も冷蔵庫も限られる小規模店ほど、絞り込みの効果は大きいです。得意料理に集中する方が、品質も評判も安定しやすくなります。

まとめ

メニューは多い方がいいわけでも、少ない方が偉いわけでもありません。大切なのは、いま何がどれだけ売れているかを数字で握り、必要な数に整えること。注文の8割は主力に集中し、下位メニューはロスと手間を静かに増やしています。まずは1か月分の注文データを出すところから始めてみてください。

削るか残すかは、注文数・粗利・集客力の3点で。全部を切る必要はなく、出し方を変えて残す道もあります。数に振り回されず、自分の店にとっての最適な品数を、数字を根拠に決めていきましょう。その判断力こそが、長く続く店の土台になります。



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