飲食店のフードロスを減らすには?仕入れとロスの見直し
飲食店のフードロスを減らすには?仕入れ・仕込み・廃棄の見直し方
【この記事のポイント】
飲食店のフードロスは、仕入れ・仕込み・廃棄の3か所を数字で見直せば減る。多くの店で食材費の3〜5%が捨てられている。まず1週間、廃棄の中身を記録する。それだけで原価率は1〜2ポイント下がる。感覚ではなく数字で管理するのが最短の近道。
環境省の推計では、事業系の食品ロスは年間約236万トン。うち外食産業の割合は決して小さくありません。正直なところ、これは「もったいない」で終わる話ではなく、そのまま利益を削っている数字です。捨てた食材にも仕入れ代・仕込みの人件費・光熱費が乗っている。つまり、フードロスは二重三重にコストがかかっている無言の赤字なのです。
この記事では、私たち株式会社Somewhereが全国17店舗を運営するなかで実際に取り組んできたロス削減の手順を、現場の失敗とあわせて具体的にお伝えします。きれいごとではなく、明日から数字を動かせる方法だけを書きます。
今日のおさらい:要点3つ
- ロスは「見える化」から。捨てる前に量と原因を記録すれば、どこで漏れているかが1週間でわかる。
- 仕入れは「多めに買う安心」を疑う。過剰在庫は割引以上に廃棄で損をする。適正在庫は売上データから逆算。
- 仕込みと廃棄は「使い切る設計」で減らす。歩留まりの改善とメニュー間の食材共有が効く。
この記事の結論
一言で言うと、フードロス削減は「節約」ではなく「原価管理そのもの」です。最も重要なのは、廃棄を感覚で語らず、量・金額・原因を数字にすること。記録を始めた店は、平均して食材費の3%前後、店によっては月に数万円単位の改善が見込めます。SDGsの前に、まず自店の利益を守る取り組みとして始めるのが現実的です。
「捨てているつもりはない」のに、なぜか原価が下がらない
閉店後、生ゴミ袋の重さに気づかないふりをしてしまう
営業が終わって厨房を片付けるとき、パンパンになった生ゴミ袋を無言で口を縛る。仕込みすぎたソース、頼まれなかった付け合わせ、期限切れ間近の野菜。ひとつひとつは「まあ、これくらいは仕方ない」。だから量ることもしない。翌月の試算表で原価率が上がっていても、「今月は仕入れが高かったからかな」で片づけてしまう。
よくあるのが、この「仕方ない」の積み重ねです。1日あたりの廃棄が食材費の数百円でも、25日営業なら月に数千円から一万円超。年間にすれば十数万円が、静かに利益から消えていきます。厄介なのは、この損失が伝票のどこにも「廃棄」として出てこないこと。仕入れた食材が売上に変わらなかった、という差分でしか見えないのです。
ロスは「3つの場所」で発生している
フードロスを漠然と「もったいない」で見ていると、手の打ちようがありません。実は、飲食店のロスは発生場所でおおむね3つに分けられます。整理するだけで、対策の順番が見えてきます。
- 仕入れロス:買いすぎ・発注ミスで、使う前に傷んで捨てる。冷蔵庫の奥で忘れられた食材が典型。
- 仕込みロス:野菜の皮や魚のアラなど下処理で出る「歩留まり」分と、作りすぎた仕込みの廃棄。
- 提供ロス:出したのに残された料理(食べ残し)と、注文取り消し・提供ミスによる廃棄。
このうち、店側の努力で最も減らしやすいのは仕入れロスと仕込みロスです。提供ロス、とくにお客様の食べ残しは量の設定や声かけで改善はできても、ゼロにはできません。だからこそ、コントロールできる前二つに集中するのが賢い順番です。
実体験①:1週間の「廃棄記録」だけで原価率が1.8ポイント下がった
Somewhereのある居酒屋業態で、原価率が目標の30%に対して34%まで上がった月がありました。仕入れ単価は変わっていない。そこで、特別なシステムは入れず、厨房の壁に紙を貼って「捨てたもの・ざっくりの量・理由」を1週間だけ書いてもらいました。
すると、原因の大半が二つに集中していました。ひとつは、日曜に多めに仕込んだ煮込み系が月曜のランチ前に廃棄されていたこと。もうひとつは、キャベツの外葉を必要以上に剥いていたこと。前者は仕込み量を金土日曜で分けるだけ、後者は下処理の基準を写真で共有するだけで解決しました。翌月、原価率は32.2%に。わずか1.8ポイントですが、月商400万円なら約7万円の利益改善です。数字が見えた瞬間、スタッフの手が勝手に変わりました。
仕入れ・仕込み・廃棄の見直し方(基本と判断軸)
仕入れ:適正在庫は「売れた数」から逆算する
仕入れの見直しで最初にやめたいのが、「なんとなく多め」です。欠品が怖いのはわかります。ただ、過剰在庫の廃棄は、欠品による機会損失よりも確実に財布を痛めます。目安として、生鮮は「その食材を使うメニューの直近2〜3週間の平均販売数」から必要量を割り出し、日持ちしないものは翌日に持ち越さない量に抑えます。
もうひとつ有効なのがABC分析の発想です。仕入れ金額の大きい食材(Aランク)ほど丁寧に発注量を管理する。ケースによりますが、上位2〜3割の食材で仕入れ金額の7割前後を占めることが多く、そこを締めるだけで効果が出ます。中小企業庁の経営支援でも、在庫管理は資金繰り改善の基本項目として繰り返し挙げられています。
仕込み:歩留まりと「食材の使い回し設計」で削る
仕込みロスは、二つの角度から減らせます。ひとつは歩留まりの改善。野菜の皮や魚のアラを、まかないや別メニューに転用する「捨てる部位を減らす」発想です。もうひとつが、複数メニューで同じ食材を共有する設計。1つの食材が1つのメニューにしか使えないと、そのメニューが出ない日にまるごと余ります。
Somewhereのベーカリーカフェ業態では、前日のパンをフレンチトーストやラスクに転用する仕組みを組みました。焼き上げたパンの売れ残りは、以前は翌朝に廃棄。今は翌日の限定メニューに変わり、廃棄をほぼ半分に。実は、この「二毛作メニュー」はロス対策であると同時に、原価の低い人気商品を生む一石二鳥の手でもあります。
現場の声:ベテランと若手で「もったいない」の基準が違う
ロス削減を進めると、必ずぶつかるのが現場の温度差です。ある店でこんな会話がありました。
若手スタッフ「これ、もう時間経ってるので捨てておきますね」
ベテラン店長「待って。それ、まかないで使えるし、火を入れれば明日のスープに回せる。捨てる前に一回声かけて」
若手「え、そこまで見てるんですか」
店長「見てるというか、これ全部お金だから。捨てる判断も、活かす判断も、誰かが決めないと毎日ブレるんだよ」
この一件でわかったのは、ロスは技術以前に「基準の共有」の問題だということ。ルールが曖昧だと、良心的なスタッフほど「安全側」で早めに捨ててしまいます。
実体験②:発注をアプリ化したら、逆にロスが増えた失敗
正直な失敗談もひとつ。ある店で発注をスマホアプリに切り替えたところ、最初の2か月はむしろロスが増えました。理由は、発注が楽になった分、「念のため」の追加発注が気軽にできてしまったから。便利さが、買いすぎの言い訳になっていたのです。
対策は単純で、発注前に「前回の在庫が使い切れているか」を確認する一手間をチェック項目に固定しました。ツールは判断を代わりにしてはくれません。数字を見る習慣とセットで初めて効きます。
よくある失敗と、その防ぎ方
失敗①:ロスを「原価率」だけで見て、原因を追わない
原価率が上がった、で終わってしまうのが一番もったいないパターンです。率は結果でしかありません。仕入れなのか、仕込みなのか、食べ残しなのか——発生場所を分けて見ないと、対策が的外れになります。まずは廃棄の中身を、金額の大きい順に3つだけ書き出してみてください。
失敗②:削りすぎて品質と欠品を招く
逆に、ロスをゼロにしようと在庫を絞りすぎるのも危険です。人気メニューが早々に品切れになれば、客離れと売上減を招きます。ロス削減は「捨てない」ことが目的ではなく、「仕入れた分をきちんと売上に変える」こと。欠品率と廃棄率、両方をにらむバランス感覚が要ります。ここは、他社のノウハウ本や食材業者のアドバイスも公平に取り入れて、自店の客数に合った落としどころを探るのが現実的です。
判断基準:この廃棄は「防げたロス」か「必要なコスト」か
すべての廃棄が悪ではありません。歩留まり分や、品質を守るための廃棄は「必要なコスト」。一方、買いすぎ・作りすぎ・管理ミスは「防げたロス」。この二つを分けて考えると、力を入れる場所が明確になります。防げたロスから優先的に潰す。これがコスパの良い順番です。
こういう店は、今すぐ「廃棄の記録」を始めるべき
もし今、原価率が目標より2ポイント以上高い、あるいは「なんとなく食材が余っている気がする」なら、来週から1週間だけでいいので廃棄を記録してみてください。紙とペン、スマホのメモで十分です。
大切なのは、完璧を目指さないこと。まずは「見える化」の一歩だけ。数字が見えれば、スタッフも自然と動き方を変えます。フードロス削減は、環境への貢献であると同時に、自店の利益を1円ずつ取り戻す作業。始めるのに、設備投資も資格も要りません。必要なのは、今日から量る勇気だけです。
よくある質問
Q1. フードロスを減らすと、原価率はどれくらい下がりますか?
A1. 店の状態によりますが、記録と仕入れ見直しで食材費の2〜4%改善が目安です。原価率で1〜2ポイント下がる店が多く、月商が大きいほど金額インパクトも大きくなります。
Q2. 何から始めればいいですか?
A2. まず1週間、廃棄したものと理由を記録することです。原因の上位2〜3個に絞って対策すれば、最小の手間で最大の効果が出ます。いきなり全部やろうとしないのがコツです。
Q3. 仕入れを減らして欠品したら、逆に損では?
A3. その通りで、削りすぎは禁物です。人気メニューの主力食材は欠品しない量を確保し、日持ちしない食材だけ翌日に持ち越さないよう調整します。廃棄率と欠品率の両方を見るのが正解です。
Q4. 小さな個人店でも取り組む意味はありますか?
A4. むしろ小規模店ほど効果が大きいです。1日数百円の廃棄でも、年間では十数万円。利益率の薄い飲食店では、この差が黒字と赤字を分けることもあります。規模に関係なく取り組む価値があります。
Q5. フードロス削減はSDGsの取り組みとしても使えますか?
A5. はい。食品ロス削減はSDGsの目標12に直結し、店の姿勢としてお客様や求職者へのアピールにもなります。ただ、まずは自店の利益改善として始めるほうが続きやすく、結果的にSDGsにもつながります。
Q6. 仕込みの作りすぎを防ぐコツは?
A6. 曜日ごとの販売実績をもとに仕込み量を分けることです。金土と月火では出数が違います。過去2〜3週間の平均を目安に、作り置きは「翌日中に使い切れる量」を上限にすると安定します。
Q7. 余った食材を別メニューに回すときの注意点は?
A7. 衛生管理と提供期限を必ず守ることです。転用ありきで古い食材を使うのは本末転倒。温度管理と再加熱の基準を決め、安全に使い切れる範囲でだけ二次利用してください。品質が最優先です。
Q8. 記録は手書きとアプリ、どちらがいいですか?
A8. 続けやすいほうで構いません。最初は厨房に貼った紙で十分です。習慣化してから会計ソフトや在庫アプリに移すと、数字が蓄積されて分析しやすくなります。ツールより「続けること」が先です。
まとめ
飲食店のフードロスは、仕入れ・仕込み・廃棄の3か所を数字で見直せば確実に減らせます。ポイントは、感覚で「もったいない」と言う前に、まず量って記録すること。1週間の見える化だけで、原因の大半は仕入れと仕込みに集中していることが見えてきます。防げたロスから優先的に潰し、必要なコストとは区別する。この順番が、最小の手間で利益を取り戻す近道です。
ロス削減は、特別な設備も資格も要りません。今日の閉店後、生ゴミ袋の中身を一度だけ見て、金額の大きい3つを書き出す。そこからすべてが変わります。捨てていたのは食材ではなく、あなたの店の利益だったと気づくはずです。まずは来週から、小さく始めてみてください。
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