飲食店のドリンクで利益を上げるには?原価と品揃え
飲食店のドリンクメニューで利益を上げる|原価率とラインナップ
【この記事のポイント】
ドリンクは利益の柱だ。料理の原価率が30%前後なのに対し、ドリンクは10〜30%で済む。同じ1杯でも、生ビールは40%近く、ハイボールは10%台に収まる。つまり何を売るかで利益はまるで変わる。目指すべきはドリンク比率25〜30%。ここを超えると、料理を値上げしなくても利益は残る。
正直なところ、多くの店はドリンクを「料理のついで」として扱っています。よくあるのが、原価の高い生ビールばかり出て、利益率の高いサワーやハイボールに手が回っていないケース。1杯あたりの利益差は数十円でも、月に数千杯を積み上げれば、その差は数万円から十数万円になります。
この記事では、ドリンクの原価率の考え方、利益を生むラインナップの組み方、そしてノンアル・ソフトドリンクの取りこぼしまで、現場のケースと数字でお伝えします。ケースによりますが、ドリンクの見直しは料理の改善より早く数字に効きます。
今日のおさらい:要点3つ
- ドリンクの原価率は10〜30%と料理より低い。同じ売上でも、ドリンクが伸びれば利益はまるで違う。まず「何が出ているか」を数える。
- 目安はドリンク比率25〜30%。ここを超えれば、料理を値上げせずとも利益が残る。低原価の看板ドリンクを1杯育てるのが近道。
- ノンアル・ソフトドリンクの取りこぼしは大きい。飲まない客の1杯を用意するだけで、客単価も満足度も上がる。
この記事の結論
一言で言うと、ドリンクは「原価率の低い1杯を、いかに気持ちよく多く出すか」の設計です。最も重要なのは、生ビール偏重から抜け出すこと。原価40%の1杯より、原価15%の1杯が同じ価格で売れれば、利益は倍以上残ります。品揃えと見せ方を少し変えるだけで、料理に手をつけずに利益率は上がります。
なぜドリンクは、利益の柱になりきれていないのか
締め作業のあと、料理は売れたのに利益が薄い夜
閉店後、レジを締めて売上を見る。今日はよく入った。料理もたくさん出た。なのに、手元に残る利益はいつもと変わらない。伝票をめくり直すと、出ているのは生ビールと烏龍茶ばかり。飲み物の利益が薄い。何が悪いのか、はっきり言えないまま、また同じ夜を繰り返す。
この違和感の正体は、ドリンクの中身を数えていないことにあります。料理の原価は気にしても、ドリンクは「頼まれたものを出すだけ」になりがち。ですが1杯ごとの原価は大きく違います。生ビール1杯の原価はおよそ200円前後、原価率にして35〜45%。一方、ハイボールやサワーは30〜60円、原価率10〜20%台。同じ500円でも、残る利益はまるで別物です。
「とりあえず生」に、利益を持っていかれていないか
日本の飲食店で「とりあえず生ビール」は根強い習慣です。悪いことではありません。回転も速く、満足度も高い。ただ、生ビールは原価率が最も高いドリンクのひとつ。ここに注文が集中しすぎると、ドリンクが出ているのに利益は薄い、という状態になります。実は、接客の一言や2杯目の提案で十分ずらせます。
2杯目からハイボールやサワー、店の名物ドリンクへ自然に流れる導線があるかどうか。ここで差がつきます。1杯目の生は満足のため、2杯目以降は利益のため。そう割り切って設計している店は、同じ客数でもドリンクの利益がしっかり残ります。2杯目の構成を変えるだけで、粗利は1割前後動きます。
【実体験①】ハイボールを看板にしたら、ドリンク粗利が月8万円増えた
ある40席ほどの居酒屋での話です。ドリンク比率が20%前後で伸び悩んでいました。伝票を1週間分すべて数えると、ドリンクの半分以上が生ビール。利益率の高いハイボールやサワーは、メニューの隅にひっそり載っているだけでした。まず、樽詰めのハイボールを導入し、看板ドリンクとしてメニューの一番上に大きく載せ替えました。
あわせて、スタッフには「2杯目は名物ハイボールもおすすめです」と一言添えてもらうようにしました。ハイボール1杯の原価はおよそ50円、価格は450円。原価率は約11%です。生ビールから乗り換えが進んだ結果、翌月のドリンク粗利はおよそ8万円増えました。売る杯数はほぼ変わっていません。中身の構成を入れ替えただけで、これだけ利益が動きました。
利益を生むドリンクラインナップの、組み立て方
まず「ドリンク比率」で、今の立ち位置を知る
ドリンクの良し悪しを勘で語らないために、ドリンク比率という物差しがあります。総売上に占めるドリンク売上の割合です。居酒屋・バーなら30〜40%、レストランやカフェでも20%前後が一つの目安。この比率が低い店は飲み物で稼げる余地を残しています。まずは1か月の売上を料理とドリンクに分けて出してみてください。
そのうえで、原価率の低い「稼ぎ頭」を1〜2品つくります。ハイボールやレモンサワー、自家製サングリアなど、原価15%前後で価格の付けやすいもの。これを看板として前面に押し出す。逆に、生ビールやボトルワインなど原価の高いものは、無理に減らさず「1杯目・特別なとき」の位置づけに。全体で原価率20%前後に収まれば、ドリンクは立派な利益の柱です。
【実体験②】ノンアルを3種に増やしたら、客単価が180円上がった
別のダイニングバーでは、ノンアルドリンクが烏龍茶とジンジャーエールの2種だけでした。運転する人や飲めない人が、料理だけ頼んで水で済ませてしまう。もったいない、という相談でした。そこで、ノンアルカクテルや自家製クラフトコーラなど、見た目も価格も「頼みたくなる」1杯を3種類ほど加えました。原価はどれも50〜80円ほどです。
結果、飲まない客の多くが水ではなくノンアルの1杯を頼むように。1グループに1〜2人はいる「飲まない人」が、400〜500円のドリンクを注文する。積み重なって平均客単価がおよそ180円上がりました。ノンアルは原価が低く、粗利率でいえばアルコール以上。飲めない客の取りこぼしは、多くの店が見落としています。
現場の声:ホールスタッフとのやり取り
2杯目の提案を始めたとき、実際にあったやり取りです。
スタッフ「2杯目をおすすめするの、押し売りっぽくて気が引けます」
店長「売りつけるんじゃなくて、名物を知ってもらう感覚でいいよ」
スタッフ「あ、それなら言えます。『うちのハイボール、樽で炭酸強めなんです』みたいな」
店長「それそれ。おいしそうに伝えるだけで十分」
ドリンクの提案は、売り込みだと思うと出てこない言葉も、「おすすめの紹介」だと思えば自然に出ます。実際、客の側も「何がおすすめ?」と聞きたいことは多い。押しつけではなく、店が自信を持つ1杯を気持ちよく伝えるだけ。数字の前に、まず現場が納得できる伝え方かどうかが大事です。
よくある失敗と、ドリンク設計の判断基準
失敗①:種類を増やしすぎて、仕込みとロスで利益が消える
利益を出そうと、カクテルや果実酒を何十種類も並べる店があります。一見豪華ですが、開封後に使い切れないリキュールやフルーツが廃棄になり、原価率がかえって上がる。ドリンクの強みは「仕込みが少なく、ロスが出にくい」点。ここを崩しては本末転倒です。まずは出数の多い10〜15種に絞り、稼ぎ頭を育てるほうが確実に利益は残ります。
失敗②:価格を安くしすぎて、利益率まで薄くする
ドリンクを「集客の目玉」にしようと、生ビール290円のような安売りに走る店もあります。集客効果はあっても、原価の高い生を赤字寸前で売れば、たくさん出るほど利益は減ります。安くするなら、原価の低いサワーやハイボールで。ハイボール290円なら原価率17%前後で、安さと利益を両立できる。「何を安くするか」の見極めが、価格設計の判断基準です。
飲み放題を導入した店が、確認したこと
宴会需要を取り込みたくて、飲み放題を検討する店は多い。ここでも他店と比べる前に、確認すべき数字があります。飲み放題は1人あたりの原価が読みにくく、飲む量の多い客が続けば赤字になりかねません。判断基準は、「平均何杯飲まれるか」「その原価が飲み放題料金の何割か」の2点。おおむね原価が料金の30%以内に収まるなら、導入の目はあります。
比較した店が最終的に見ていたのは、飲み放題の有無より「客層と単価が合うか」でした。宴会中心なら送客効果は大きく、静かに食事を楽しむ店なら不要なことも多い。低原価ドリンク中心に組めば飲み放題でも利益は残せます。どの選択にも一長一短があり、横並びで真似てもうまくいくとは限りません。
こういう店は、今すぐドリンクの中身を数えるべき
もし「ドリンクは出ているのに利益が薄い気がする」なら、まずは1週間、伝票のドリンクを種類ごとに数えてみてください。生ビールが何杯、ハイボールが何杯、ノンアルが何杯。それを書き出すだけで、利益を持っていかれている1杯と、育てるべき1杯が見えてきます。多くの店は、原価の高いドリンクに注文が偏っています。
大きな投資は要りません。低原価の看板ドリンクを1杯決め、メニューの一番上に載せ、2杯目に一言そえる。それだけで、料理に手をつけずにドリンク粗利は動きます。中小企業庁の調査でも、飲食業の利益改善は原価と客単価の見直しが要とされています。ドリンクはその両方に効く手軽なレバー。今週末から、まずは数えるところを始めましょう。
よくある質問
Q1. 飲食店のドリンクの原価率は、何%が目安ですか?
A1. おおむね10〜30%が目安です。生ビールは35〜45%と高めですが、ハイボールやサワーは10〜20%台。全体で原価率20%前後に収まれば、ドリンクは利益の柱になります。
Q2. ドリンク比率は、どのくらいを目指せばいいですか?
A2. 居酒屋・バーで30〜40%、レストランやカフェで20%前後が目安です。まずは総売上を料理とドリンクに分け、今の比率を把握することから始めてください。
Q3. 一番利益が出るドリンクは何ですか?
A3. ハイボールやサワー、自家製サングリアなど原価15%前後のものです。原価50円ほどで400〜450円で売れるため、1杯の粗利が大きい。看板として前面に押し出すのがおすすめです。
Q4. 生ビールはやめたほうがいいですか?
A4. やめる必要はありません。1杯目の満足度と回転に貢献します。ポイントは2杯目以降を低原価ドリンクへ自然に誘導すること。生は「1杯目・特別なとき」の位置づけが有効です。
Q5. ノンアルやソフトドリンクは、力を入れる価値がありますか?
A5. 大いにあります。原価が低く粗利率はアルコール以上。飲まない客が水で済ませる取りこぼしは大きく、頼みたくなる1杯を用意するだけで客単価が100〜200円上がることもあります。
Q6. ドリンクの種類は多いほうがいいですか?
A6. 多すぎは逆効果です。使い切れないリキュールやフルーツが廃棄になり原価が上がります。出数の多い10〜15種に絞り、稼ぎ頭を育てるほうが利益は残ります。
Q7. 飲み放題は導入したほうがいいですか?
A7. 客層によります。宴会中心なら送客効果が大きいですが、原価が料金の30%以内に収まるかを先に確認を。低原価ドリンク中心に組めば、飲み放題でも利益は残せます。
Q8. ドリンクを安売りしても大丈夫ですか?
A8. 何を安くするか次第です。原価の高い生ビールの安売りは利益を削ります。安くするなら原価の低いサワーやハイボールで。ハイボール290円なら原価率17%前後で両立できます。
まとめ
飲食店のドリンクは、料理のついでではなく利益の柱です。料理の原価率が30%前後なのに対し、ドリンクは10〜30%。原価の低い看板ドリンクを1杯育て、2杯目へ自然に誘導するだけで、料理に手をつけずに利益率は上がります。まずは1週間、伝票のドリンクを種類ごとに数えることから始めてください。
そして、飲まない客のノンアル・ソフトドリンクの取りこぼしを忘れずに。頼みたくなる1杯を用意するだけで、客単価も満足度も上がります。種類を増やしすぎず、稼ぎ頭を絞る。ドリンクは、仕込みも仕入れもほとんど増やさずに数字を動かせる、一番手軽なレバーです。来月の締め作業のあと、手元に残る利益が、きっと厚くなっています。
名古屋の飲食店選びを、ブランド思想から考える
飲食店の成功は、料理や立地だけで決まるものではありません。どのような価値を届け、誰に選ばれる店を目指すのかという「ブランド思想」も、来店後の満足度を左右します。
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