飲食店の開業に必要な資格・許可は?営業許可の取り方
飲食店開業に必要な資格・許可|営業許可・食品衛生責任者・防火管理者
【この記事のポイント】
飲食店の開業に必須の届出は3つある。「保健所の営業許可」「食品衛生責任者の設置」「消防への届出」。このうち国家資格は不要。食品衛生責任者は1日6時間・約1万円の講習で取れる。営業許可は申請から交付まで2〜3週間かかる。だから内装工事の前に保健所へ事前相談が鉄則。深夜0時以降に酒を出すなら、警察への深夜酒類提供の届出も別途いる。順番を間違えると開業が丸ごと遅れる。
「開業に、調理師免許は要るんですよね?」——正直なところ、この誤解はとても多いです。結論から言うと、飲食店を開くのに調理師免許は必要ありません。必要なのは、店に1名の「食品衛生責任者」と、保健所の「営業許可」。この2つが土台です。そこに、店の規模や営業形態に応じて防火管理者や深夜酒類の届出が乗ってくる、という構造で理解すると一気に見通しがよくなります。
この記事では、私たち株式会社Somewhereが全国17店舗を出店してきたなかで実際に踏んできた手続きの順番を、つまずきやすいポイントとあわせてお伝えします。制度の条文ではなく、「どの順で動けば開業が遅れないか」を具体的に書きます。
今日のおさらい:要点3つ
- 飲食店開業に調理師免許は不要。必須なのは「食品衛生責任者(店に1名)」と「保健所の営業許可」の2つ。責任者は約1万円・1日の講習で取得できる。
- 営業許可は申請から交付まで2〜3週間かかり、施設基準を満たす設計が前提。内装工事の着工前に、必ず保健所へ図面を持って事前相談すること。
- 収容人数30人以上なら防火管理者、深夜0時以降に酒を出すなら警察への深夜酒類提供の届出が追加で必要。営業形態で必要書類が変わる。
この記事の結論
一言で言うと、開業の許認可は「食品衛生責任者」と「営業許可」を軸に、店の条件で必要なものが積み上がる仕組みです。最も重要なのは、手続きの順番。とくに営業許可は施設の構造そのものを審査するため、内装ができてから相談すると作り直しになりかねません。図面段階で保健所に当たる。この一手が、開業日をずらさないための最大の保険になります。
「調理師免許がないと開けない」——その思い込みが遠回りを生む
開業本を何冊も買い、手続きの章だけ読み飛ばす
物件を探し、コンセプトを練り、メニューを考える。開業準備のワクワクする部分には夢中になれる。ところが「許認可」の章になると、専門用語の多さに手が止まる。ネットで「飲食店 開業 資格」と検索しては、調理師免許が要るのか要らないのか、記事によって書き方が違って混乱する。手続きは「あとでまとめてやればいい」と、いちばん後ろに置かれがちです。
よくあるのが、この「手続き後回し」です。でも実は、許認可は開業スケジュールの背骨。ここが遅れると、内装も採用も仕入れも、すべてが後ろにずれます。とくに食品衛生責任者の講習は、地域によっては1〜2か月先まで予約が埋まっている。知らずに直前に動くと、講習が間に合わず開業日を延ばす事態も現実に起こります。
開業に必要な資格・許可は、この4つで整理できる
飲食店開業でつまずかないために、必要な許認可を「必須の2つ」と「条件つきの2つ」に分けて押さえておきましょう。この枠で考えると、自分の店に何がいるかが判断しやすくなります。
- 食品衛生責任者(必須):店ごとに1名。講習(約6時間・1万円前後)を受ければ取得でき、国家資格は不要。栄養士・調理師などの有資格者は講習免除。
- 飲食店営業許可(必須):保健所へ申請し、施設基準の検査に合格して交付。申請から交付まで2〜3週間が目安。これがないと営業できない。
- 防火管理者(条件つき):収容人数30人以上の店で必要。甲種・乙種の講習を受講し、消防へ選任を届け出る。
- 深夜酒類提供飲食店営業の届出(条件つき):深夜0時以降に主に酒を提供する店(バー等)で必要。警察署へ営業開始10日前までに届出。
ポイントは、上2つは業態を問わない土台、下2つは「規模」と「営業時間・提供内容」で発生する追加、という切り分けです。加えて火を使う設備を置くなら、消防への「防火対象物使用開始届」なども絡みます。全部を一度に覚える必要はなく、自店の条件に照らして必要なものだけ拾えば十分です。
実体験①:内装完成後に保健所へ行き、手洗い設備で差し戻された
Somewhereで初期に出したある店で、施工会社に任せ、内装が仕上がってから保健所へ営業許可を申請したことがありました。ところが検査で、厨房の手洗い設備が基準を満たしていないと指摘されたのです。当時の基準では調理場の従業員用手洗いに加え、客用トイレにも手洗いが必要で、蛇口の形状にも決まりがありました。「見た目はきれいなのに、なぜ?」と現場は戸惑いました。
結果、手洗い器の追加工事で約8万円と、工程で1週間強の遅れが発生しました。原因は、着工前に保健所へ図面を見せていなかったこと。この一件以降、Somewhereでは出店のたびに「まず図面を持って保健所へ事前相談」を鉄則にしています。事前に当てておけば、シンクの数や手洗いの位置、床や壁の材質まで、その場で確認できる。正直、この30分の相談が、後の数万円と数日を守ってくれると痛感しました。
手続きの基本と順番:どこから動けば遅れないか
食品衛生責任者:講習の予約は「物件が決まったらすぐ」
食品衛生責任者は、店に必ず1名置く「人の要件」です。取得は、各都道府県の食品衛生協会が開く養成講習を1日受けるだけ。受講料は1万円前後、時間はおよそ6時間で、衛生法規・公衆衛生・食品衛生の3科目を学びます。調理師・栄養士・製菓衛生師などの資格を持っていれば、講習は免除されます。つまり、無資格からでも1日で要件を満たせるわけです。
ただ、落とし穴は「予約の混み具合」です。都市部では人気で、申し込みから受講まで1〜2か月待つことも珍しくありません。だから物件契約が固まった段階で、まず講習日を押さえてしまうのが安全です。オーナー本人がすぐ受けられない場合は、スタッフの誰かが取得して責任者になる形でも要件は満たせます。いちばん最初に動いてよい手続きだと考えてください。
営業許可:施設基準を「工事前」に保健所と合わせる
営業許可は、書類だけでなく「施設そのもの」を審査する許可です。厨房と客席の区切り、シンクの数、手洗い設備、床・壁の清掃しやすさ、換気——こうした構造基準を満たしているかを、保健所の担当者が現地検査で確認します。だからこそ、内装の設計段階での相談が決定的に効きます。流れは、事前相談→着工→工事中に申請書提出→完成後に施設検査→交付。交付まで2〜3週間はみておくのが安全です。
なお、施設基準は2021年の食品衛生法改正で全国的に整理され、地域ごとの上乗せが残る部分もあります。必ず出店先の保健所で最新基準を確認してください。日本政策金融公庫が公開する開業の手引でも、この「保健所への早期相談」は繰り返し強調されています。公的な情報源も口をそろえて「先に当てておけ」と言っている、ということです。
現場の声:「消防の届出って、飲食店にも要るんですか?」
開業相談を受けると、消防まわりで必ず出てくるのがこの質問です。ある独立希望のスタッフと、こんなやり取りがありました。
スタッフ「保健所は分かったんですけど、消防にも何か出すんですか?」
担当「うん。火を使う店だから、けっこう絡むよ。まず内装工事の前に『防火対象物使用開始届』。それと、席数が30人以上なら防火管理者を選任して届け出る」
スタッフ「30人って、けっこう普通の広さですよね……」
担当「そうなんだよ。カウンターと小上がりで意外と超える。だから物件を決める前に、収容人数と消防設備は必ず確認しておくべきなんだ」
この会話のあと、彼は物件検討の段階で消防署にも足を運ぶようになりました。消防は「開業直前に慌てて対応するもの」と思われがちですが、実際は物件選びから効いてくる。とくに雑居ビルは既存の消防設備の状況で費用が大きく変わり、見落とすと契約後に想定外の設備費が乗ることがあります。
実体験②:深夜まで酒を出す業態で、警察への届出を後から知った
Somewhereでバー寄りの業態を出したときのこと。深夜0時を回っても酒を提供する計画でしたが、当初は「保健所の営業許可があれば足りる」と考えていました。実際には、深夜0時以降に主として酒類を提供する店は、警察署へ「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」を営業開始の10日前までに出す必要があります。届出には図面や営業方法の書類が要り、用途地域によっては営業できない場所もあります。
幸い、内装設計の前に気づけて事なきを得ましたが、後から発覚していれば開業日を10日以上ずらすところでした。ちなみに接待を伴う店は「風俗営業許可」という別枠で、審査に1〜2か月かかります。「ただ深夜に酒を出すだけ」なのか「接待を伴う」のかで手続きが根本から変わる。ここは早い段階で線引きをはっきりさせておくべきです。
よくある失敗と、その防ぎ方
失敗①:内装工事を先に進めてしまう
いちばん多く、いちばん高くつくのが、保健所に相談する前に内装を仕上げてしまうパターンです。施設基準を満たしていなければ、完成した厨房を作り直すことになり、費用も工期も膨らみます。防ぎ方は一つ。図面ができた段階で、施工会社任せにせず自分自身が保健所へ足を運び、基準を確認すること。最終責任は開業者にあると考えてください。
失敗②:講習や届出のリードタイムを甘く見る
食品衛生責任者の講習が1〜2か月待ち、営業許可の交付に2〜3週間、深夜酒類は10日前までに届出——それぞれに「間に合わせるべき締切」があります。これを開業直前にまとめてやろうとすると、必ずどこかが詰まります。防ぎ方は、開業日から逆算した「手続きの工程表」を作ること。物件契約・工事・採用と同じ列に、許認可のマイルストーンを並べる。数字で締切を可視化すれば、慌てずに済みます。
判断基準:行政書士に頼むか、自分でやるか
営業許可の申請は、自分で進めることも十分可能です。判断の軸は「営業形態の複雑さ」。通常の飲食店営業だけなら、保健所が丁寧に教えてくれるので自力で問題ありません。一方、深夜酒類や風俗営業、複数店舗の同時開業など書類が複雑になる場合は、行政書士へ依頼する選択肢もあります。相場は数万円〜十数万円。業者を鵜呑みにせず、「自分でできる範囲か」を見極めて、必要な部分だけ外注するのが賢い使い方です。
こういう人は、今すぐ「保健所と消防」に足を運ぶべき
もし今、物件の目星がついていて、これから内装の打ち合わせに入るなら、その前に一度、管轄の保健所と消防署へ足を運んでください。図面(手描きのラフで構いません)を持って「この物件でこういう店をやりたい」と伝えるだけで、担当者は必要な手続きと基準を具体的に教えてくれます。相談は無料。電話を一本入れてから向かうとスムーズです。
許認可は、面倒な壁のように見えて、実は開業の道筋を照らす地図です。先に当てておけば、内装のやり直しも、開業日の延期も避けられる。特別な資格は要りません。必要なのは、正しい順番で、少しだけ早く動くこと。その一歩が、夢見た開店日を予定どおり迎えるための、いちばん確実な準備になります。
よくある質問
Q1. 飲食店を開くのに調理師免許は必要ですか?
A1. 必要ありません。開業に必須なのは「食品衛生責任者」の設置と保健所の「営業許可」の2つです。調理師免許があると食品衛生責任者の講習が免除される利点はありますが、無資格でも1日の講習で要件を満たせます。
Q2. 食品衛生責任者はどうやって取りますか?
A2. 各地の食品衛生協会が開く養成講習を1日(約6時間)受けるだけです。受講料は1万円前後。栄養士・調理師などの有資格者は講習が免除されます。人気で1〜2か月待つ地域もあるため、早めの予約が安全です。
Q3. 営業許可は取得までどのくらいかかりますか?
A3. 申請から交付まで、施設検査を含めて2〜3週間が目安です。施設基準を満たす必要があるため、内装工事の前に保健所へ図面を持って事前相談するのが鉄則。基準を外すと工事のやり直しになります。
Q4. 防火管理者は必ず必要ですか?
A4. 店舗の収容人数が30人以上の場合に必要です。甲種・乙種の講習を受講し、消防署へ選任を届け出ます。カウンターと客席で意外と30人を超えるため、物件段階で収容人数を確認しておきましょう。
Q5. 深夜まで酒を出す店は、追加で何が要りますか?
A5. 深夜0時以降に主に酒類を提供する店は、警察署へ「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」を営業開始の10日前までに提出します。用途地域によっては営業できない場所もあるため、物件選びの段階で確認が必要です。
Q6. 手続きは自分でできますか、行政書士に頼むべきですか?
A6. 通常の飲食店営業なら自分で十分可能で、保健所も丁寧に教えてくれます。深夜酒類や風俗営業など書類が複雑な場合は行政書士に依頼する手もあり、相場は数万円〜十数万円。複雑な部分だけ外注するのが効率的です。
Q7. 手続きは、どの順番で進めればいいですか?
A7. 物件契約後すぐ食品衛生責任者の講習を予約し、内装の図面段階で保健所・消防に事前相談。工事と並行して営業許可を申請し、完成後に施設検査。深夜酒類があれば開業10日前までに警察へ届出、という流れが基本です。
Q8. 開業時の許認可で、費用はどのくらい見ておくべきですか?
A8. 食品衛生責任者講習が1万円前後、営業許可の申請手数料が業種・自治体により1万6千〜2万円程度が目安です。防火管理者講習や深夜酒類の届出は別途。行政書士に頼む場合は数万円〜が加わります。
まとめ
飲食店の開業に、調理師免許は要りません。必須なのは「食品衛生責任者(店に1名・約1万円の講習で取得)」と「保健所の営業許可(交付まで2〜3週間)」の2つ。そこに、収容30人以上なら防火管理者、深夜0時以降に酒を出すなら警察への届出、という条件つきの手続きが加わります。自店の規模と営業形態に照らして、必要なものだけを拾えば大丈夫です。
いちばんの肝は、順番です。とくに営業許可は施設の構造を審査するため、内装ができてからでは間に合いません。図面段階で保健所と消防に足を運ぶ——この一手が、やり直しの費用も開業日の延期も防いでくれます。手続きは壁ではなく地図。少しだけ早く動くことが、予定どおりの開店を迎える最短ルートです。まずは今日、管轄の保健所に電話を一本、入れてみてください。
名古屋の飲食店選びを、ブランド思想から考える
飲食店の成功は、料理や立地だけで決まるものではありません。どのような価値を届け、誰に選ばれる店を目指すのかという「ブランド思想」も、来店後の満足度を左右します。
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