飲食店の経営が苦しいときは?立て直しの優先順位
飲食店の経営が苦しいときの立て直し方|まず見直すべき優先順位
【この記事のポイント】
経営が苦しいときは、手をつける順番を間違えると立て直せない。まず見るのは「あと何ヶ月、店が回るか」という手元資金。次に固定費、そして客数、最後に原価。この順番が鉄則だ。売上を追う前に、まず止血をする。苦しい店ほど「売上を上げれば解決する」と考えるが、実際に効くのは支出の見直しから。判断はすべて数字で行う。感情で決めると必ず遅れる。
正直なところ、赤字の店の多くは「何が悪いか」を数字で把握していません。感覚で「客が減った」と感じても、実際には客単価の低下や原価の上昇が重なっていることが多い。まずは月次の数字を1枚に並べ、どこから血が流れているのかを特定する。ここを飛ばして販促にお金をかけると、傷が深くなるだけです。
この記事では、資金・固定費・客数・原価という4つの見直しポイントを「どの順番で」「どこまで」手をつけるかに絞って整理します。実際の立て直し現場で使った数字も交えながら、明日から動ける形にまとめました。
今日のおさらい:要点3つ
- 手元資金で「残り何ヶ月もつか」を最初に計算する。3ヶ月を切ったら止血が最優先。
- 着手の順番は「資金→固定費→客数→原価」。効果が早く出て痛みの少ない順に動く。
- 売上アップより先に固定費の削減。家賃・人件費・リースは月単位で効き続ける。
この記事の結論
一言で言うと、立て直しは「止血が先、成長は後」です。最も重要なのは、手元資金であと何ヶ月もつかを把握し、固定費という毎月出ていくお金から先に手を打つこと。客数や原価の改善は大切ですが、効果が出るまで時間がかかる。まず時間を稼ぎ、その間に立て直す。順番を守るだけで、助かる店はかなりあります。
苦しいときほど、見えなくなる「本当の原因」
閉店後の店で、電卓を何度も叩き直す夜
営業を終えて誰もいない客席で、通帳の残高とにらめっこ。来月の家賃と仕入れ、給料日の金額を紙に書き出しては消し、また書き直す。スマホで「飲食店 経営 苦しい 立て直し」と何度も検索して、同じような記事を上から下まで読んでいく。読み終わっても不安は消えず、気づけば深夜2時。こういう夜を過ごしている経営者は、実は珍しくありません。
苦しいときほど、頭の中は「とにかく売上を上げなきゃ」でいっぱいになる。でも、その焦りが判断を狂わせます。新メニューを増やし、チラシを刷り、クーポンを配る。動いている実感はあるのに、お金は減っていく。よくあるのが、この「動いているのに沈んでいく」状態です。
「売上が足りない」の裏に隠れているもの
苦しさの正体は、たいてい一つではありません。売上が10%落ちただけに見えて、実は原価が数ポイント上がり、人件費が膨らみ、家賃は据え置き。この重なりで利益がゼロを割る。中小企業庁の調査でも、飲食業は他業種に比べ利益率が薄く、少しの環境変化で赤字に転じやすいと指摘されています。だからこそ、原因を一つに決めつけず、数字で分解することが立て直しの入口になります。
実は、原因の分解は難しくありません。月の売上、食材費、人件費、家賃などの固定費。この4つを紙1枚に書くだけで、どこが重いかが見えてきます。感覚では「客が減った」と思っていても、数字を並べると「客数は横ばい、原価だけ跳ねている」ことが分かる。そこが本当の傷口です。
実体験:月商が2割落ちた店で、まず止めたこと
あるグループ内の業態で、月商が前年比マイナス20%まで落ち込んだ時期がありました。当時の手元資金は、家賃と人件費を払うと残り約2ヶ月分。まず経営陣がやったのは、新規販促の全面停止です。広告や試作にかけていた月十数万円を止め、「今ある資金であと何ヶ月回るか」を毎週計算し直す体制に切り替えました。
売上を追う前に、まず出ていくお金を止める。地味な判断でしたが、これで資金の減りが緩やかになり、立て直しに使える「時間」が生まれました。結果として、その後3ヶ月かけて固定費と原価を見直し、翌期には黒字に戻すことができた。ビフォーは「毎月20万円ずつ資金が減る店」、アフターは「トントンで踏みとどまれる店」。派手さはありませんが、まず沈まないことが最優先でした。
立て直しの順番は「資金→固定費→客数→原価」
まず資金:あと何ヶ月もつかを数える
最初にやるべきは、手元資金で何ヶ月もつかの計算です。計算式は単純で、「今使える現預金 ÷ 毎月出ていく固定費+仕入れ」。これが3ヶ月を切っていたら、赤信号だと考えてください。日本政策金融公庫などの制度融資や、リスケ(返済の一時猶予)の相談も、資金が尽きる前に動くのが鉄則。底をついてからでは、打てる手が一気に減ります。
ケースによりますが、運転資金は最低でも固定費の3ヶ月分を確保しておきたい。手元が薄いなら、借入枠の確認や支払いサイトの交渉で「時間を買う」ことを先に考えます。時間さえあれば、次の固定費や原価の改善が効いてくるからです。
次に固定費:毎月効き続ける削減から
固定費は、一度下げれば毎月ずっと効きます。家賃の減額交渉、使っていないサブスクやリースの解約、水道光熱費の契約見直し、シフトの適正化。飲食店の人件費率は売上の30%前後が一つの目安ですが、暇な時間帯に人が多すぎないか、時間単位で見直すだけでも効果が出ます。売上を10%上げるより、固定費を10%下げるほうが、たいてい早くて確実です。
ただし、削りすぎには注意が必要です。人を減らしすぎて接客が雑になれば、客足が遠のく。固定費の削減は「客に伝わらない部分」から先に、が原則。バックヤードの無駄や、なんとなく続けている契約から手をつけるのが安全です。
現場の声:ベテラン店長との会話
立て直し中の店で、店長とこんなやり取りがありました。
店長「正直、集客のイベントを打ちたいんです。動いていないと不安で」
私「気持ちは分かります。でも今、広告に使えるお金は何ヶ月分ですか」
店長「…言われてみると、1ヶ月分もないですね」
私「なら、まずは水曜の午後のシフトを1人減らしましょう。それだけで月に数万円残る。イベントはそのあとです」
動きたい気持ちを、正しい順番に向け直す。これも立て直しの大事な仕事です。焦りは悪いものではなく、向ける先を間違えなければ力になります。
よくある失敗と、その防ぎ方
失敗①:売上アップに全部を賭けてしまう
いちばん多い失敗が、苦しさを売上だけで解決しようとすること。新メニュー、割引、広告——どれも即効性がありそうで、実は結果が出るまで時間もお金もかかります。その間に資金が尽きれば、店は続けられない。売上施策は「止血が済んで、資金に余裕ができてから」。順番を守るだけで、無駄打ちが減ります。
失敗②:原価を先に、削りすぎる
原価は最後に手をつける項目です。理由は、下げすぎると味と満足度に直結するから。原価率30%前後が目安とはいえ、無理に安い食材へ切り替えれば、常連が離れて売上が落ち、結局は逆効果になります。原価は「仕入れ交渉」「ロス削減」「歩留まりの改善」で下げる。品質を落とさずに数ポイント改善するのが、正しい原価の触り方です。
実体験:原価より先に「捨てていた食材」を見直した店
別の店では、原価率が35%を超えて苦しくなっていました。仕入れ先を叩く前に、まず1週間の廃棄を全部記録してもらった。すると、仕込みすぎた副菜や、注文の少ないメニューの食材が毎日のように捨てられていた。廃棄を金額に直すと、月に4万円近く。ここを絞るだけで、原価率は実質2ポイント下がりました。
安い食材に替えるのではなく、まず「無駄に捨てているもの」を減らす。味は変わらず、利益だけが戻ってくる。原価に手をつけるなら、この順番が安全です。仕入れ交渉はそのあとでも遅くありません。
こういう店は、今すぐ「順番」を組み直すべき
もし今、手元資金が3ヶ月分を切っているのに販促にお金をかけているなら、いったん立ち止まってください。順番が逆になっている可能性が高い。まず資金の残り月数を数え、固定費のうち「客に伝わらない部分」から削る。それだけで、沈むスピードは確実に緩みます。
一人で抱え込む必要もありません。数字を1枚にまとめて、税理士や商工会、金融機関に早めに相談する。苦しい状況を言葉にするのは勇気がいりますが、動くのが早いほど選べる手は多い。立て直しは、恥ずかしいことではなく、経営者の当たり前の仕事です。今日の営業後、まずは通帳と固定費の一覧を並べるところから始めてみてください。
よくある質問
Q1. 立て直しで一番最初にやることは何ですか?
A1. 手元資金で「あと何ヶ月もつか」の計算です。現預金÷(固定費+仕入れ)で出します。3ヶ月を切っていれば、売上より先に止血を優先してください。
Q2. なぜ売上アップを最優先にしてはいけないのですか?
A2. 効果が出るまで時間がかかり、その間も資金が減り続けるからです。固定費の削減は翌月から効きます。まず出費を止め、時間を稼ぐのが先です。
Q3. 固定費はどこから削ればいいですか?
A3. 客に伝わらない部分からです。未使用のサブスク、割高なリース、暇な時間帯の過剰なシフト。人件費率は売上の30%前後を目安に、時間単位で見直します。
Q4. 原価はどのくらいまで下げるべきですか?
A4. 目安は30%前後ですが、無理に食材を替えて下げるのは危険です。まずロス削減と仕入れ交渉で、味を落とさず数ポイント改善するのが安全です。
Q5. 資金が尽きそうです。融資は間に合いますか?
A5. 底をつく前に動けば間に合う可能性は十分あります。日本政策金融公庫や制度融資、返済のリスケ相談は、残り3ヶ月を切る前に着手してください。
Q6. 家賃の値下げ交渉なんてできるのですか?
A6. できるケースは意外とあります。空室リスクを嫌う貸主も多く、数字を示して誠実に相談すれば、数千円〜数万円の減額に応じてもらえることがあります。まず一度打診を。
Q7. 立て直しに、目安としてどのくらいの期間がかかりますか?
A7. 止血で1ヶ月、固定費と原価の改善で2〜3ヶ月が一つの目安です。多くの店は、順番を守れば3ヶ月ほどで資金の減りが止まり、黒字化が見えてきます。
Q8. 相談は誰にすればいいですか?
A8. 税理士、商工会・商工会議所、取引金融機関が身近です。無料の経営相談窓口もあります。数字を1枚にまとめて持参すると、具体的な助言をもらいやすくなります。
まとめ
経営が苦しいときの立て直しは、順番がすべてです。まず手元資金であと何ヶ月もつかを数え、固定費という毎月効くコストから削る。客数と原価の改善はその後で十分に間に合います。焦って売上だけを追うと、動いているのに沈んでいく。まず止血、それから成長。この順番を守るだけで、助かる店は確実に増えます。
そして、一人で抱え込まないこと。数字を1枚に整理して、早めに専門家へ相談する。今日の営業が終わったら、まずは通帳と固定費の一覧を並べてみてください。そこが、立て直しの第一歩になります。
名古屋の飲食店選びを、ブランド思想から考える
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