飲食店のシフト管理のコツは?人件費と人手のバランス

飲食店のシフト管理と労務|人件費を抑えつつ人手を確保する

【この記事のポイント】

飲食店のシフト管理は、人件費と人手のどちらかを削る作業ではない。両立させる設計だ。人件費率の目安は売上の30%前後。この数字を守りながら忙しい時間に人を厚くするのが正解。カギは「1日単位」ではなく「1時間単位」で必要人数を見ること。ピークの1時間に合わせて全時間帯を組むと、必ず人件費は膨らむ。

シフトを店長の勘だけで組んでいると、暇な時間に人が余り、忙しい時間に人が足りない、という両方の損が同時に起きます。よくあるのが、去年の同じ曜日のシフトをそのままコピーしているケース。売上は毎年動くのに、人の配置だけが固定されている状態です。

この記事では、人件費率の見方、繁閑に合わせたシフトの組み方、そして最低賃金や労働時間といった労務のルールまで、現場のケースと数字を交えてお伝えします。正直なところ、完璧なシフトは存在しません。ただ、見る単位を変えるだけで、ムダとムリは確実に減ります。

今日のおさらい:要点3つ

  • 人件費率の目安は売上の30%前後。ただし「率」だけを追うと、忙しい時間の人手不足を招くので要注意。
  • シフトは1日単位でなく1時間単位で組む。ピークに厚く、アイドルタイムに薄く。時間帯別売上が設計図になる。
  • 最低賃金・労働時間・休憩は「守って当たり前」。ここを崩すと、人件費以前に人が離れ、行政指導のリスクも負う。

この記事の結論

一言で言うと、シフト管理は「人件費率」と「時間帯別の必要人数」を重ねて考える作業です。最も重要なのは、忙しい1時間を基準に全時間を組まないこと。ピークに合わせて薄い時間まで人を置けば、率は簡単に35%を超えます。時間ごとに山と谷を見れば、質を落とさず人件費は下がります。

なぜシフトを組むたびに、人件費と人手のどちらかが崩れるのか

月末、電卓を何度も叩き直してしまう夜

月末、シフト表と売上を並べて、電卓を何度も叩き直す。人件費率が32%になっている。あと2%削りたいけれど、来週は連休で忙しい。誰かの時間を削れば回らなくなるかもしれない。かといって、このままでは利益が残らない。結局、答えが出ないまま表を閉じて、また来月同じことを繰り返す。

この堂々巡りの正体は、シフトを「日」でしか見ていないことにあります。1日の合計人時だけを削ろうとすると、必ずどこかの時間帯にしわ寄せが行く。忙しい時間を削れば売上を落とし、暇な時間を削るには誰がいつ暇なのかを把握していない。数字で言えば、時間帯別の売上データを取っていない店ほど、この夜を何度も繰り返します。

「人件費率30%」という数字だけが、独り歩きしていないか

人件費率30%前後は、たしかに一つの目安です。原価と合わせたFLコストで見れば、60%以内に収めたい。ただ、この率だけを目標にすると危ない。率を下げようと人を減らしすぎれば、提供が遅れ、接客が雑になり、結果として客単価も再来店率も落ちます。人件費を1%削って、売上を3%落とすなら本末転倒です。

実は、率は「結果」であって「目標」ではありません。適正な人数を適正な時間に置いた結果、率が30%前後に収まる、という順番が正しい。ケースによりますが、繁盛して売上が高い月は率が下がり、閑散期は同じ人数でも率が上がる。だから月ごとの率だけを見て一喜一憂しても、あまり意味がないのです。

【実体験①】時間帯別売上を貼り出したら、人件費が2%下がった

ある30席ほどのカフェでの話です。人件費率が34%で、下げたいけれど回らない、という相談でした。まず1週間、1時間ごとの売上を記録してもらいました。すると、14時〜16時の売上が他の時間の3分の1以下だと判明。にもかかわらず、その時間もランチと同じ3名体制で回していたのです。

そこで14時以降を2名に減らし、代わりに読みが甘かった土曜の夜を1名増やしました。合計の人時はほぼ変えていません。配置を組み替えただけです。結果、翌月の人件費率は34%から32%へ。しかも「夜が回らない」という現場の不満も消えました。時間帯別の数字を貼り出しただけで、感覚のシフトが根拠のあるシフトに変わった瞬間でした。

人件費を抑えつつ人手を確保する、シフト設計の基本

まず「人時売上高」で、シフトの厚さを判断する

シフトの厚薄を勘で決めないために、人時売上高という物差しがあります。売上を総労働時間で割った数字で、1人が1時間でいくら売り上げたかを表します。飲食店の目安はおおむね4,000〜6,000円。この数字が低い時間帯は、人が余っているサイン。高すぎる時間帯は、人手不足で機会損失やクレームが起きやすいサインです。

たとえば5,000円を基準にするなら、それを大きく下回る時間は1名減らせないか、上回りすぎる時間は1名増やせないかを検討する。この一つの数字を持つだけで、「なんとなく多め」「なんとなく少なめ」というシフトが、判断できるシフトに変わります。全部を厳密にやる必要はありません。まずはピークとアイドルタイムだけ見れば十分です。

【実体験②】固定シフトをやめて、繁閑に合わせたら残業が消えた

別の居酒屋では、全員が18時〜23時の固定シフトでした。一見きれいですが、実際は18時台は暇で、20〜21時に予約が集中する店。開店直後は人が余り、ピークにはむしろ足りず、閉店後の片付けで全員が残業していました。月の残業代だけで数万円が積み上がっていたのです。

そこで、出勤時間を19時・19時半・20時とずらし、早く上がれる人は22時で退勤する形に変えました。ピークの2時間に人が重なり、前後は薄くなる。いわゆる「山型シフト」です。結果、月の残業はほぼゼロに。人件費は変わらないのに、忙しい時間の余裕が生まれ、スタッフの疲労感まで減りました。全員同じ時間、が必ずしも公平でも効率的でもない、と気づいた例です。

現場の声:ベテランパートさんとのやり取り

山型シフトを提案したとき、実際にあったやり取りです。

店長「開店から入ってた時間を、少し後ろにずらしたいんです」
パート「えっ、私の時間減らされるってこと?」
店長「いえ、暇な時間を削って、忙しい時間はむしろ頼りたくて。総時間は減らしません」
パート「なんだ、そういうことね。正直、開店直後って手持ち無沙汰だったのよ」

シフトの変更は、伝え方を間違えると「減らされる」という不安に直結します。総労働時間は守る、忙しい時間こそ頼りにしている、と先に伝えるだけで受け止め方が変わる。正直なところ、当人たちも暇な時間の手持ち無沙汰は感じているものです。数字の話の前に、この一言があるかどうかで納得感がまったく違います。

よくある失敗と、労務で必ず守るべき判断基準

失敗①:人件費を削りたくて、休憩や労働時間のルールを崩す

率を下げたい一心で、休憩を取らせない、6時間超なのに休憩45分を飛ばす、といった対応をしてしまう店があります。これは労働基準法に反する上に、確実に人が離れます。6時間を超えれば45分、8時間を超えれば60分の休憩が必要。ここを削って得られる数十分の人件費より、辞められて採用に走るコストのほうがはるかに高い。守って当たり前の線です。

失敗②:最低賃金の改定を見落として、そのまま据え置く

最低賃金は毎年10月ごろに改定されます。近年は上昇が続き、全国加重平均は1,000円を超えました。地域別に金額が違うため、改定を知らずに旧額のまま払っていると、意図せず法違反になります。厚生労働省の発表を毎年秋に必ず確認し、時給を見直す。これは人件費が上がる要因ですが、避けられないコストとして計画に織り込むしかありません。

シフト管理ツールを比較した人が、確認したこと

手書きやエクセルからシフト管理アプリに移す店も増えています。選択肢は複数あり、無料のものから月数千円のものまで幅広い。どれが正解かは店の規模次第、というのが正直なところ。判断基準はシンプルで、「希望収集が楽になるか」「人件費が自動で見えるか」「スタッフがスマホで確認できるか」の3点をまず確認することです。

比較した人が最終的に確認していたのは、多機能さより「毎週のシフト作成が何分短くなるか」でした。高機能でも入力が煩雑なら続きません。逆に、人数の少ない店ならエクセルの共有で十分なこともある。導入自体が目的化しないよう、今どの作業に一番時間を取られているかを先に見極めると、無駄な出費を避けられます。どのツールも一長一短で、万能な正解はありません。

こういう店は、今すぐ時間帯別のシフト見直しを始めるべき

もし「毎月シフトを組むのに何時間もかかり、それでも人件費が読めない」なら、まずは1週間だけ時間帯別の売上を記録してみてください。1時間ごとにいくら売れているか。それを書き出すだけで、余っている時間と足りない時間がはっきり見えます。多くの店は、暇な時間に人が多すぎて、忙しい時間に足りていません。

大がかりなシステムは要りません。紙とペン、あるいはレジのデータで十分です。時間帯別の売上という一枚の設計図があれば、勘のシフトが根拠のあるシフトに変わる。人件費を削るのではなく、置く場所を変える。今週末の忙しい時間から、まずは配置を見直してみましょう。

よくある質問

Q1. 飲食店の人件費率は、何%を目安にすればいいですか?

A1. 売上の30%前後が一つの目安です。原価と合わせたFLコストでは60%以内が目標。ただし率だけを追うと人手不足を招くので、時間帯別の必要人数と合わせて考えてください。

Q2. シフトは1日単位と1時間単位、どちらで組むべきですか?

A2. 1時間単位です。1日の合計だけで削ると、忙しい時間にしわ寄せが行きます。時間帯別の売上を基準にすれば、ピークに厚く、暇な時間に薄く配置できます。

Q3. 人時売上高とは何ですか?目安はいくらですか?

A3. 売上を総労働時間で割った数字で、1人が1時間で稼いだ額を表します。飲食店の目安はおおむね4,000〜6,000円。低い時間は人が余り、高すぎる時間は人手不足のサインです。

Q4. 山型シフトにすると、スタッフに不満が出ませんか?

A4. 伝え方次第です。「総労働時間は減らさない」「忙しい時間こそ頼りたい」と先に伝えれば納得されやすい。暇な時間の手持ち無沙汰は当人も感じていることが多いです。

Q5. 休憩時間は、どのくらい与える義務がありますか?

A5. 労働時間が6時間を超えれば45分、8時間を超えれば60分の休憩が必要です。人件費を理由に削ると法違反になり、離職も招きます。守って当たり前の線です。

Q6. 最低賃金はいつ確認すればいいですか?

A6. 毎年10月ごろに改定されるため、秋に厚生労働省の発表を必ず確認してください。地域別に金額が違い、近年は上昇が続いています。据え置くと意図せず法違反になります。

Q7. シフト管理アプリは導入したほうがいいですか?

A7. 店の規模によります。「希望収集が楽か」「人件費が自動で見えるか」「スマホで確認できるか」で選びましょう。人数が少なければエクセル共有でも十分なこともあります。

Q8. 人件費率が毎月ばらつくのですが、問題でしょうか?

A8. ある程度は自然です。売上が高い月は率が下がり、閑散期は同じ人数でも上がります。単月の率で一喜一憂せず、数か月の平均と時間帯別の配置で見てください。

まとめ

飲食店のシフト管理は、人件費と人手のどちらかを削る作業ではありません。時間帯別の売上という設計図をもとに、忙しい時間に厚く、暇な時間に薄く人を置く。この配置ができれば、質を落とさずに人件費率は自然と30%前後へ収まっていきます。率は目標ではなく、正しい配置の結果です。

そして、最低賃金・労働時間・休憩といった労務のルールは、人件費以前の土台です。ここを崩せば人は離れ、行政のリスクも負う。守るべきは守り、削るのではなく置き場所を変える。まずは今週、1時間ごとの売上を記録するところから始めてみてください。来月の月末、電卓を叩き直す夜が、きっと短くなります。



名古屋の飲食店選びを、ブランド思想から考える



飲食店の成功は、料理や立地だけで決まるものではありません。どのような価値を届け、誰に選ばれる店を目指すのかという「ブランド思想」も、来店後の満足度を左右します。

名古屋の飲食店ブランドが大切にしている考え方と、店選びの基準を整理したい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。

👉名古屋の飲食店ブランドとは何か|店選びの満足度を左右する「ブランド思想」の構造整理

名古屋での店選びや料理ジャンルの違い、飲食店が生み出す体験価値について、テーマ別に詳しく紹介しています。飲食業界でのキャリアや、ブランドづくり・店舗経営の判断軸を知りたい方も、以下のカテゴリーから気になるテーマをご覧ください。

👉名古屋グルメ判断
👉飲食のジャンル理解
👉飲食店の体験と価値
👉飲食キャリア
👉飲食ブランド経営判断

━━━━━━━━━━━━━━━━━━
🍽 株式会社Somewhere

私たちは「もう一度行きたくなる価値ある飲食店」を目指し、
料理・サービス・空間、そしてそのお店でしか味わえない体験を大切にしています。

📍 本社所在地
〒460-0008
愛知県名古屋市中区栄三丁目25番43号
瑞穂ビル3階

📞 電話番号
052-253-7270

🏪 直営店
全国17店舗(2025年1月現在)

🔎 店舗一覧はこちら
https://somewhereltd.jp/shop/

お近くの店舗へぜひお気軽にお立ち寄りください。
皆さまのご来店を心よりお待ちしております。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━